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「風邪、引いちゃうよ、」
「...............だから嫌やってん、」
「え....?」
彼が苦しそうな表情を見せる。
あぁ....告白されていたところを見られていたんだ、とその時ようやく悟った。
「ごめんね....でもちゃんと断ったから、」
「....嫌や、」
「断ったのにダメなの、?」
「だって、そいつとまだ一緒に働くんやろ?」
彼はまた、ぎゅうっと抱きしめる力を強くする。
「なぁ....欲しいもんあるんやったら俺が買うたるからバイト辞めてや」
「え....」
「ほんまに心配なんよ」
「他にも絶対狙っとるやついるに決まっとる」なんて怖い顔をするから、私は彼の言葉に従うことにした。
これで少しでも彼の不安が解消されるなら、バイトくらい辞めたっていい。そう思うくらいに、彼のことが大切だったから。
でもこの日を境に彼の愛情は常軌を逸すようになる。
電車に乗っていた10分間、電話に出れないだけで鬼のように溜まる通知。
「買い物してくるね」と告げれば「誰とどこへ行き、何時に帰ってくるのか」までを事細かく聞かれ。
「俺と家族以外は必要ないやんな」と連絡先を消され、しまいには1人で出掛けることも許されず、彼の家にほぼ軟禁状態で隔離される日々。
それでもたまの休みに外へ連れて行ってくれるから、それほど苦痛だと感じたこともなかった。
いつでも握り締めてくれるその大きな手が大好きだったから。
「ここの店寄ってええ?」
彼が好きな古着屋さん。
良さそうな服を見つけては「試着してくる!」と楽しそうにカーテンの奥に入っていく彼を、少し離れたところで見守った。
「あれ、A?」
見計らったかのように、彼の手が離れた瞬間に後ろから声をかけられる。振り返った先にいたのは、中学の同級生だった。
「何だ〜ちゃんと生きてんじゃん!グループ動かしてんのに全然返事よこさないから皆で心配してたんだよ」
「あー....ごめん、連絡先全部消えちゃってさ、」
「そうだったの?なら早く言えよ〜!じゃあ新しいの登録するからQR出してよ」
仲の良かった友達にそう言われて、断ることも出来ずに画面に映し出されたQRコードを差し出した。
「またアイツらに連絡しとくからさ、暇な時に飲みにでも....」
「....何してん」
後ろから低い声が聞こえる。
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ぴぃ - 残してくださって嬉しいです。またいつか戻って来てください。お返事ありがとうございました! (2021年12月30日 22時) (レス) id: 78b15a02bd (このIDを非表示/違反報告)
cleam(プロフ) - ぴぃさん» ぴぃ様、驚かせてしまって申し訳ないです( ; ; )今後手が空き次第、過去作品の加筆修正を行う予定ではありますが、全て残しておくつもりですので楽しんでもらえたら嬉しいです^^コメントをくださったこと、とても嬉しく思ってます◎ありがとうございます! (2021年12月28日 22時) (レス) id: c295088e12 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぃ - ぴぃと申します。この作品にやっと勇気を出してコメントしたら、休止されると知り寂しくなっております。長編作品、どれも続きが気になっていつも楽しみでした。作品残しておいていただけたら幸いです。何度も読み返したいです。 (2021年12月28日 2時) (レス) id: 78b15a02bd (このIDを非表示/違反報告)
cleam(プロフ) - ぴぃさん» ありがとうございます!楽しんでもらえたなら良かったです( ; ; )別の作品も楽しんでもらえますように....🙏🏻 (2021年12月22日 23時) (レス) id: c295088e12 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぃ - 完結お疲れ様でした!青のクズホストも好きですが、やはり紫さんのクズ社員が一番好きです♡また短編集も思いつきましたらしてくださると嬉しいです! (2021年12月20日 22時) (レス) id: 6570e0ebc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:cleam | 作成日時:2021年11月11日 22時