＊31 A.Side ページ1
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時計の針が、22時過ぎを指し始めた頃。
目を向けていた本をゆっくりと閉じて、お店を出た。
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Aちゃんは俺に言った。
『あの、阿部さん。…私なら全然大丈夫なので！いつも一人で帰ってますし』
『…でも、本当にありがとうございます』
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ここまで謙虚な子ってなかなか居ないと思う。
送っていく、そう自分から言ったのもなかなか珍しくて。今までだったら絶対にない。
どうしてだろうね？
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まだ、それは分からないけれど…
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阿 「…ちょっとさみぃ」
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だけど、あえて何も言わずに店を出て来た。
夜遅い夏は、さすがに少し肌寒かった。
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Aちゃんが終わる頃にまた店に向かおう。
…だって、まだ話していたいし。
シンプルに一緒に居たい、から。
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阿 「え、なんだろここ」
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散策がてら、その辺をブラブラしていたら可愛らしい雑貨屋を見つけた。
その中で、ふと、目に入ったのは星形のヘアピン。
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うわっ、コレAちゃん似合うだろうなぁ。
これだったら大学でも、プライベートでも付けていける、よね？
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気付いたら、手に取って、すぐレジへ。
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阿 「すいません。これお願いします！」
店 「はい！ありがとうございます。こちら可愛いですよね〜この店でも大人気なんですよ」
阿 「はい！すっごく！！」
店 「彼女さんに、プレゼントですか？」
阿 「あ、いえ。…全然そんなんじゃないんですけど」
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ハットを被っているから、なんとか顔バレはしないで済んだ。
最近じゃありがたいことに声をかけてもらう機会も多くなって…
買い物は極力避けている方。
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それでも、迷わずレジへ向かってしまったのは
きっとAちゃんだから、かなぁ…
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店 「ありがとうございましたぁ」
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彼女。
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そのワードにはいまいちしっくり来ない。
年もいくつか離れてるし…
なんだろ、例えるなら可愛い後輩って感じ？
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阿 「喜んでくれるといいなぁ」
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作者名：くろーばー。
| 作成日時：2020年9月10日 20時
