雨と君の涙-2- (ページ3)

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第46話ページ3

芝健side

隣の部屋の片付けが終わりリビングに戻ろうとしたら中からAとまりんの声が聞こえた。

A「……さっきまさとくんとか、帰らなきゃいけない人たちにお礼を言ってて、何気なく“またお願いね”って言おうとしたの。…でも」

立ち聞きなんてよくないことは充分分かってる。
でもそれ以上にAの声は弱々しくて、とてもじゃないけど出ていくことは出来なかった。

A「…“また”なんてあるのかなって、私なんかが“また”なんて言っていいのかなって、思っちゃって…
…急に私はここにいていいのかなって思い始めちゃってそしたらどんどん悪い方向に考えちゃって…
…みんなは優しすぎるから…」

ちらりとドアの隙間から部屋を覗くと整った顔を歪めて苦しんでいるようなAがいた。
その表情に胸が締め付けられた。
さすがにもう耐え切れず出て行こうかなと思った刹那、まりんがAの手を優しく包んだ。

まりん「いいんだよ。Aはここにいて。というか俺らがここにいて欲しいんだよ。」

A「…ぇ？…」

困惑したようなAの声は異常なまでに掠れていた。

まりん「Aは俺らのこと優しいって言うけど、一応俺らだって人間。好きな人もいれば、苦手な人もいる。苦手な人に優しく接してあげられるほど俺らだって出来た人間じゃないんよ。
だからAに優しくするのはただ俺たちがいい人っていうわけじゃなくて、俺たちがAのことを大切に思ってるってことなんだよ」

まりんは冷静に、けれど優しくそう言った。
まるで俺の気持ちを代弁してくれたみたいだ。
まりんも同じ気持ちだったことが分かりちょっと嬉しくなった。

その言葉を聞くなりAは

A「…私は……ここにいていいの…？」

と言った。
今にも泣きそうなAの表情や震えた声からどれだけ追い詰められていたのかが分かる。

ああ、なんで俺は気付いてあげられなかったんだろう。

自分を責める言葉しか出てこない。
これをAに言ったら“健くんのせいじゃないよ”って言ってくれるだろうけど。

まりん「おう。もちろん」

まりんは優しく微笑んでそう答えた。

Aの頬にキラリと滴が流れた。

その姿は今にも消えてしまいそうなほど透明感があり美しかった。

文字数の関係で次に続きます…！