シュガー＆ソルト【佐久間】

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残業で疲れきった体に、キンキンのビールはそれはもう沁み渡る。
喉を鳴らしながら3口ほど飲んだあと、先輩をふと見てみると、飲み干しそうな勢いで飲んでいて。
お酒あんまり飲めなさそうな顔してるのに、飲めるんだ、意外。
こういう所も、教育係から離れてしまう前に知れてよかったかもしれない。




「ぷはぁ、うーま」
「いい飲みっぷりですね」
「瀧本もなかなか飲むじゃん」
「すごい美味しいですもん」
「それは瀧本が頑張ったからだよ」
「へ…」
「なにその間抜けな声」
「先輩から頑張ったって言われるなんて思ってなかったので…」
「…俺だって褒める時は褒めるよ」




いつもの声色より上ずっているような気がして、逸らしていた視線を先輩に戻す。
真っ白で綺麗だなぁと思っていたほっぺたはほんのり赤くなっていて、まるで桃みたい。
って、え、まさか先輩、




「もう酔ってますか…？」
「…そんなことないよ？」




…いつもの口調はどこに行った？
こんなに柔らかい口調で話す先輩は初めてなんだけど。
心做しかいつもより頬も緩んでいる気がする。
…お酒のせい？やっぱりもう酔いが回ってるのか。
いい飲みっぷりでつい錯覚してしまったけど、あんまり飲ませない方が良さそうだな。




「はい、おまちどーさん」
「お、ありがと」
「ありがとうございます…！」




大将が運んできてくれた盛台の上にはキラキラと輝くお寿司たちが並んでいて、見るからにどれも美味しそうで胸が高鳴る。
そんな私の様子を先輩はちゃっかり横目で見ていたようで、くっくと笑っている。




「笑いましたね」
「…ぶふっ、だってさ、目ぇキラッキラなんだもん」
「だってこんなお寿司、何年ぶりかもわからないくらいですよ」
「おーおーじゃあ味わって食べな」




ほら食え食え、とお箸を渡されて。
どれから食べればいいのか迷ってしまうけど、淡白なものからがいいとか聞いた事ある気がするけど、と悩んでいれば、




「もー、好きなものから食っていいんだよ？瀧本が食べたいように食いな？」




と、目を細めて微笑む先輩。
一瞬だけ、その優しすぎる顔にどき、と胸が鳴った気がした。

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