Fingers crossed.【佐久間】

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『…よしっ、忘れ物なし！…今までありがとうございました！』


北海道に旅立つ日、最後の最後まで確認を怠らず、部屋にお礼を言って出た。
昨日の夜、ようやっと、大ちゃんの連絡先を消した。
もう二度と、会わないように。
あっちに行っても、大ちゃんの事がちらついて惑わされないように。
…これでいい。これでいいんだ。
大ちゃんには北海道に行くなんてもちろん伝えてないし、伝わってるはずがない。
忘れるきっかけにもなる。

空港まで行くのに乗り継がなければ行けなくて、駅に向かう。
少し早めに出てきたから、余裕がある。
…コンビニでも寄ってこ。

思えばこのコンビニだってあと来ることはしばらくないし、ずっと使ってたこの最寄り駅ともお別れかぁ。
そう思うとなんだか、感慨深い。
一つ一つをじっくり見ながら、目に焼きつけるようにしながら駅に向かった。


『…うん、にしても早すぎたな』


新幹線が出るまで、まだ20分程ある。
改札をくぐらず、手前のベンチに腰かける。

《寂しくて泣いてないか？！》

『…ふふっ』


康二らしいメッセージが届いてて、思わず笑みがこぼれる。
トーク画面を開けば、同僚たちと撮った写真も送ってくれていた。
ああ、楽しかったな。 また一緒に仕事がしたい、なんて思っていれば、ホームの案内のアナウンスが流れた。
そろそろ、行くか。

がらがらとキャリーケースを引っ張りながら改札をくぐろうとしたその時だった。




「A！！！！！」




改札辺りに響き渡る、私の大好きな人の声。



『…大ちゃん…なんで…』

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