Fingers crossed.【佐久間】

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それからしばらくが経った。
康二が大ちゃんにいろいろ相談されてるのも聞いていたし、それでも私は大ちゃんに会おうとしなかった。
送られてくるメッセージも、着信も全て無視した。


「いい加減会えって言うとるやん〜さっくん屍みたいになっとったで？」
『いいの、大ちゃんは屍になってればいいし、みおちゃんとくっつけばいい』
「事の発端はさっくんやけど、Aもほんま頑固やなぁ…」


呆れたように言う康二に向かって舌をべっと出す。
何やその顔！って康二は怒るんだけど、最近この日常になれてきてすごく楽しい。
私、大ちゃんがいなくても生きていけてるなぁって思えてた。
それなのに、私の転勤が決まったのは9月あたりのこと。
あまりにも急なお話で、頭が混乱したし、断ろうとも考えたけど上からの圧でそれどころでは無かった。


「それほんまなん！？」
『ほんと。…急すぎてさ…』
「転勤先どこなん」
『北海道支社』
「北海道？！？！？」


だから声大きいってば馬鹿。
ばしぃっと大きく音を鳴らしながら叩けば、痛い痛いと言いつつ、話を掘り下げてくる。


「ほんまに行くん」
『行くしかないんだもん』
「10月付け、やろ？」
『そう。…引っ越しやら荷造りやらめんどくさい…』
「いやいや、それよりさっくんやろ、どうするん」


…なんで、大ちゃんが出てくるの。
大ちゃんとはもう別れたの、もう他人なの。
これ以上、名前を出さないで。


『…もう、関係無いから』


名前を聞く度に、心の内に秘めた思いが溢れだしてきそうで、必死を蓋を閉める。
ぎゅっと唇を噛んだ康二の顔が、私の瞳に映った。

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