家事、お引き受けいたします。【青】

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｢渡辺さん！初日から遅刻する気ですか！？｣







午前6:00。




家政婦の私が、なぜか渡辺さんを起こしている。




親か、私は。








渡｢眠いーーーー。｣




｢起きてくださいよ！｣








今日は渡辺さんの出勤一日目。




さすがに不安だったようで、朝から来て欲しいと頼まれた。




結果、私がいなかったら完全に遅刻だったから来てよかったっていう話なんだけど。









渡｢あぁーーーーーー。｣




｢おはようございます。はい、顔洗ってきてください。｣




渡｢んーーーーーー。｣







寝癖がついたボッサボサの髪の毛を触りながら洗面所へと消えていく姿は可愛くて、つい口元が緩む。




ガッツリ寝起きを見たのは初めてかもしれない。




彼女だったら毎日見れるのかなーなんて考えたりしていたら、卵焼きを焦がしてしまった。









……ちょっと長すぎない？




もしかして洗面所で寝てる？




渡辺さんが洗面所に行ってからもう20分が経とうとしている。




このままじゃ本当に遅刻だ。








｢渡辺さん！？大丈夫ですか？｣




渡｢ん？｣







様子を見に行くと、パックを顔に貼った人がこちらを向いた。




状況からして渡辺さんなんだろうけど、意外すぎる姿に言葉を失ってしまった。








｢な…にやってる…んですか？｣




渡｢パック。｣




｢え、今の間ずっとですか？｣




渡｢これはやり始めたばっかだけど。
洗顔とか保湿とかしてた。｣









渡辺さんは、こう見えて美容番長らしい。




確かに、ここの掃除をしていた時にスチーマーの種類多すぎてビビったことあったっけ。




元カノさんのものだと思っていたけど違ったのね。




じゃなくて…………








｢ダメです！今日はここまで！
もう準備しないと本気で遅刻しますよ？｣





渡｢えぇ……｣








何か言いたげなパック姿の渡辺さんを見て吹き出しそうになったけど、我慢してリビングへと戻った。




｢美容が趣味…朝のスキンケアは長い……っと。｣




仕事用のノートに新しく情報を追加した。





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｢じゃあ、行ってらっしゃい！｣




渡｢行ってきます。｣




｢頑張ってくださいね！｣









見送ったスーツ姿の渡辺さんは、私が惚れたあの時よりもずっとずっと格好良かった。

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