家事、お引き受けいたします。【青】

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ガチャガチャ、と玄関から鍵を開ける音がした。




何回も聞いているはずなのに、どうしてか緊張する。








渡「あれ、まだいたの？」




「ちょっと話したいことがありまして。」




渡「なに？」








私はいつから渡辺さんの笑った顔を見ていないのだろう。




私が見ているのは、不機嫌そうな顔ばかり。




今だって、ね。








「最近、就活どうですか？」




渡「どうって。見てりゃ分かるじゃん。上手くいってないよ。」








話は聞いてくれるみたいで、渡辺さんはソファに座った。








「明日の面接、最後ですね。」




渡「あーそっか。あんま期待しないでね。ま、もうしてないか。」




「そんなことないです。」




渡「Aちゃんもさ、もう疲れたんじゃない？」




「え？」




渡「俺のために仕事探してくれてるけど、普通にしんどくない？」









しんどい。そりゃしんどいよ。




でもさ、そんな簡単にやめられないんだよ。




きっとこれは渡辺さんの最後のチャンスだから。




そして、私のチャンスでもあるから。









渡「結局、俺はダメなんだよね。ここまでやってもらってるのに採用もらえないとか。
終わってんだよ。俺の就活。」




「渡辺さん･･･」




渡「ごめん。もう寝ていい？頭痛くなってきた。」









私の返事を聞く前に、渡辺さんはソファから立ち上がり洗面所へと行ってしまった。








なにも聞けなかった。




知りたいことは、なにも。




分かったのは、渡辺さんはもうほとんど諦めているということ。








だけど、明日の面接で変わるかもしれない。




もしかしたら採用をもらえるかもしれない。




あんな渡辺さんを見ても、未だにこんな期待をしている私は馬鹿なのかな。

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