恋セヨオトメ【黄】 (ページ10)

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その日から私は学校での練習だけでなく、
家に帰ってからも走るようにした。

自分の満足いくまで走って、自信をつけたかった。

｢おかーさん！行ってくるね！｣

『気をつけるんだよ〜』

｢はーい。｣

去年の誕生日プレゼントにもらった
お気に入りのシューズで私は家を飛び出した。

走るといっても家に帰ってきてからはランニング。

中学の時から同じコースを走り続けている。

夜は人通りもそこまで多くなくて、
平坦な道が多いから走りやすい。

今日もいつものように
好きな音楽を流しながら走る。

5月ももうすぐ終わる。

冷たかった風は、気づけば少し暖かくなった。

20分くらい走ると大きな川が見えてくる。

この川に沿って作られた道は
ランニングにはもってこいで、
同じように走っている人がいつも何人かいる。

今日はデカくてゴツい男の人が前からやってきた。

かなりスピードが出ているのが遠目からでもわかる。

え、なんかすごい飛ばすじゃん…？

どんどん近くなっていくその人の姿が
はっきり見えた時

見覚えのある走り方にドキリとした。

岩本先輩……？

私たちの距離がなくなっていくにつれて
それは確信に変わる。

完全に岩本先輩だ。

岩｢…あれ？…はぁ…吉田？｣

｢こ、こんばんはっ…！｣

あちらも私だと分かったようで、足を止めてくれた。

頬はほんのり赤く染まり、汗で髪の毛が濡れている。

岩｢お前もランニング？｣

｢は、はい。｣

岩｢この川沿いよく走ってんの？｣

｢そうですね。いつもこの川沿いは通ってます。｣

岩｢へぇー俺もだよ。
まぁここまで来たのは久しぶりだけど。

あ、一緒に走る？
俺ここら辺で折り返そうと思ってたから。｣

まだ共学になる前、この川沿いを走る岩本先輩を
何回か見たことがある。

だけどその時はただ見ることしかできなかった。

一緒に走ることになるなんて、誰が想像した？