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岩｢練習を始める前に先生から、
夏の大会についての話があります。
先生、よろしくお願いします。｣
『えー、市大会の出場選手の話はこの前の顔合わせの時にほとんどしたんだが、
リレーのメンバーだけ決まってなかったから
今から発表する。』
毎年この時期になると、
夏の大会に向けて本格的に練習が始まる。
まず最初に市大会が行われ、
そこで上位に入ると県大会に進むことができる。
そして最終的にはインターハイへと続くのだ。
基本的には自分の専門の種目で戦うのだが、
リレーには専門の選手がいない。
だから短距離の中から4人出される。
毎年3年生の中から選ばれるのが普通で、
今年もそうだと思っていた。
『まず男子。岩本、金子、松田、齋藤。』
岩｢『はい。』｣
『さすが岩本先輩。安定だね。』
｢だね。｣
『次に女子。村上、永倉、赤城、吉田。』
苺｢『はい。』｣
………………え？
吉田……？私？
『以上だ。メンバーは練習後に話があるので
集合するように。』
岩｢じゃあ各自アップを始めてください。｣
混乱、とはまさにこのことを言うのだろう。
バラバラとみんなが散っていく中、
私はその場を動くことができなかった。
どうして私が？
先輩じゃなくて…？なんかの間違い？
苺｢A！リレー、頑張ろうね！｣
｢苺花先輩！！｣
苺花先輩に話しかけられて、我に返った。
ほかの３年生が私を見て何か話している。
話の内容くらいだいたい想像がつく。
そんな中でニコニコして私を見る先輩は、
この選考に疑問を抱いていないのだろうか。
｢私、リレーなんて…｣
苺｢なんで？A、足速いじゃん。｣
｢いや…速くないですって…｣
何を根拠に私が速いなんて言っているのか。
先輩たちの視線が痛い。
分かってる。走るべきなのは私じゃないことくらい。
焦りと不安が頭の中でぐちゃぐちゃになる。
岩｢俺は吉田がリレー走るの納得だけど？｣
先輩たちからの視線を遮るように
泣きそうになっている私の前に立ったのは
大きな背中の岩本先輩だった。
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作者名：ひなの
| 作成日時：2021年7月22日 21時
