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Aside
ついにやってきた、県大会。
1か月前の市大会の時とは全然違う。
別に根拠なんてないけど、なんか勝てる気がする。
苺｢おっはよー！！｣
｢おはようございますっ！｣
苺｢おぉ〜元気いいね！この前とは大違いじゃん？｣
｢それは言わないでくださいよ！｣
苺｢ごめんごめん(笑)
ほら！照！A来たよ！｣
岩｢あぁ…おはよ。｣
｢お、おはようございます…｣
体育祭から2週間が過ぎたのに、
私と岩本先輩は気まずいままで
あの日自分が言ったことを
毎日のように後悔していた。
岩｢勝てそうか…？｣
｢今日は…はい…｣
苺｢いやいや。その感じ、そろそろどうにかしなよ！｣
岩｢苺花。｣
苺｢はぁ……行こ、A。｣
｢はい…｣
拗ねたような顔をしている岩本先輩を置いて、
私たちは更衣室ヘ向かった。
.
あっという間に自分の競技。
まずは個人から。
市大会では走る前から負けていた。
だけど、あの時とは違う。
岩本先輩のおかげで変われたんだ。
ワクワクとちょっとの緊張をもって
私は自分のレーンに立った。
『On your marks』
スターティングブロックに足をかける。
震えなんて全くなくて
私には自分の走るコースしか見えていない。
『Set』
勝ちたい。絶対1位をとってやる。
パァンッ！！！
足が軽い。
周りなんて全然見えなくて、
ひとりで風をきっているような感覚。
そうそう、これこれ。
ふふっ。すごく楽しい。
気づけば私はゴールラインを越えていた。
『A！1位だよ！！！しかも自己ベスト！』
そんなマネージャーの声が聞こえる。
グラウンドから客席を見上げると、
岩本先輩が身を乗り出しながらこちらを見て
笑っていた。
もはやこの距離じゃ、目をつぶってるのか開いてるのか分からないくらいに顔をくしゃくしゃにして
笑っていた。
ほら、またそうやって。
私の心を掴んで離さない。
好きなんだよ。岩本先輩のことが。
大好きなの。
お願いだから、もう期待させないで。
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作者名：ひなの
| 作成日時：2021年7月22日 21時
