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岩｢ん。撮れたぞ。｣
｢…ありがとうございます。｣
だめだ。岩本先輩の顔を見れない。
私は、目を逸らしながらスマホを受け取った。
可愛いって、どういう意味で言ってるの。
後輩として？妹的な存在として？
それとも……
なんてまた馬鹿な妄想して、胸が苦しくなる。
きっとこの単語にそんな深い意味なんてない。
でも、岩本先輩は私のことどう思ってるんだろう。
そもそも恋愛対象に入っているのだろうか。
『岩本ー、吉田ーそろそろ帰れー』
岩｢あ、すんません。｣
｢引き止めちゃってすみません。｣
岩｢なんで謝んだよ(笑) ほら、帰んぞ。｣
｢はい…｣
岩｢荷物取ってきたら
昇降口で待ってて。一緒に帰ろ。｣
｢え？あ…はい…｣
きっとこれにも深い意味なんてない。
分かっているはずなのに
どうしてこんなに嬉しくなるの。
どうしてこんなにドキドキするの。
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帰りの電車の中。ドアの前に私たちは立っていた。
ちょうど帰宅のラッシュと被ってしまって、
電車は満員だった。
岩｢リレー、正直1位になれるとは
思ってなかったわ。｣
｢私もです。｣
岩｢吉田のおかげだからな。｣
｢いやいや…私はなにも。｣
そう言うと、岩本先輩は小さくため息をついた。
岩｢だからさ、なんでそんな自信ないんだよ。｣
｢え？｣
岩｢今回は誰がどう見ても
吉田が速かったから勝てたんだよ。
そんくらいちゃんと自覚して、
もっと自分に自信持て。｣
私のおかげで勝てた？
そんなこと今まで言われたことない。
岩｢お前は速いよ。俺が保証する。｣
電車が揺れた。
岩本先輩はよろめく私の腰に手を回し、
自分の方に引き寄せる。
岩｢っぶねぇ…｣
｢どうしてですか…｣
岩｢ん？｣
｢どうして、岩本先輩は
そんなに私に優しくしてくれるんですか。｣
いったい私は、どんな言葉を期待していたの？
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作者名：ひなの
| 作成日時：2021年7月22日 21時
