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岩本side
2年前の俺を見ているみたいだった。
先輩の中にただ1人選ばれて、
迷惑をかけるわけにはいかないって
変なプレッシャーに押しつぶされて
力を出し切れなかった。
吉田も全く同じ。
だから、ほっとけなかったんだよね。
｢ありがとうございます…｣
近くにあった自販機で飲み物を買って、
タオルと一緒に渡した。
吉田は涙でぐしゃぐしゃになった顔をタオルで擦る。
俺もあの時涙を見せられていたら
誰かが声をかけてくれていたのかな、なんてね。
岩｢吉田さ、今日なに考えて走ってた？｣
｢え…？そりゃ…負けたくないって…｣
岩｢なんで？｣
｢なんでって言われても…｣
岩｢自分のせいでって考えたら、こわかったから？｣
｢………｣
図星だったようで、吉田は俯いた。
岩｢吉田は苺花たちのために走ってんの？｣
｢自分の…ため…です｣
岩｢だろ？じゃあ迷惑かけたくないとか
そういうの考えんのやめろ。｣
俺は1年の時、個人では調子が出るのに
リレーになると急に走れなくなっていた。
なんでこんな事になるのか考えてみたら
｢俺が先輩たちの足を引っ張るわけにはいかない｣
っていつも焦点を自分以外に当てていたからだった。
岩｢それに、まぁ陸上に限ったことじゃねーけどさ。
負けられない、よりも勝ちたいって
気持ちの方が大事だと思うぞ。｣
｢勝ちたい………｣
岩｢そう。今まではずっとそう思って走ってただろ。｣
｢……私、最近走るの全然楽しくなくて。
多分リレーに選ばれたっていう責任で
その感情忘れてました。｣
岩｢だな。気づけてよかったじゃん。｣
｢岩本先輩のおかげです。ありがとうございます。｣
少し嬉しそうな顔でそうやって言うから安心した。
俺と吉田はよく似ている。
だけど、吉田は素直だ。
プライドが高くていつも強がっていた俺とは違って。
弱さを見せられる人間の方が強い。
自分の弱さを受け入れて、変わろうとするから。
だからきっと大丈夫。
吉田は強くなる。
岩｢またなんかあったら助けてやるから、
もう絶対逃げんなよ。｣
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作者名：ひなの
| 作成日時：2021年7月22日 21時
