恋セヨオトメ【黄】 (ページ17)

今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:128,973 hit

016 ページ17

.

ギリギリだった。

正直、普通に勝てるはずの相手と

ほぼ同時にゴールラインを踏んだ。

県大会には進めることになったけど、
今の走りじゃそこから上にはいけない。確実に。

何が悪かった？

どこを直せばいい？

そんなこと考えても
全てがダメだったような気がして、
絶望感に襲われる。

『苺花先輩、自己ベストだって！』

『えーすごい！さすがだね！』

その知らせが私に更なる追い打ちをかけた。

苺花先輩はしっかり1位をとったらしい。

｢リレー……｣

今の私が走ったら、確実に足を引っ張ってしまう。

しかも苺花先輩は流れに乗っていて、
リレーでも好記録が期待できる。

もうやだ……

今すぐにでもここから逃げ出したい。

『続いては、男子100mです。』

『あっ！岩本先輩！』

『うわぁ〜かっこいい〜！！』

アナウンスの声で、
会場の人たちが一気にグラウンドの方を向く。

私もつられてそちらを向くと、
たしかに岩本先輩の後ろ姿があった。

圧倒的な体格差で、遠くからでもよく分かる。

見慣れた雪高のユニフォームではなく、

黒地に緑のラインが入った
私たちと同じ配色のものを着ていて

本当に同じ学校なんだ、って改めて思った。

岩本先輩はスタート位置についても
ずっと余裕があって、

走る前から勝てそうな雰囲気が出ていた。

そしてその予想通り、周りに大差をつけて

岩本先輩も1位をとった。

風を切って走る姿は、すごくかっこよかった。

得意のスタートダッシュでまず頭ひとつ抜け、
圧倒的なスピードで周りを引き離していく。

憧れて、こんな人になりたいと思った

岩本先輩の姿。

物理的な距離は近くなっても、

やっぱり私にとって岩本先輩は
絶対に手の届かない人のようだ。