恋セヨオトメ【黄】 (ページ16)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:129,007 hit

015 ページ16

.

初めての大会よりも
中学の最後の大会よりも

ずっとずっと緊張する。

昨日の夜はなかなか眠れなかった。

苺｢おはよう！｣

｢お、おはようございます！｣

苺｢すんごい顔してるけど大丈夫？｣

｢緊張で吐きそうです…｣

苺｢Aってそんなに緊張しいだったっけ？？｣

｢いつもはこんなことないんですけど……｣

個人競技は良くも悪くも自分だけの問題で、
ここまでプレッシャーに押しつぶされそうになることはない。

今まで体験したことのないような変な感覚だった。

競技の時間が迫るにつれて、緊張感は高まるばかりで

個人の100m走のために招集がかけられた頃には
もはや何も考えられなくなっていた。

一緒に集まった苺花先輩は関節を伸ばしたりして
準備をしている。

いつもはニコニコしている先輩も
人が変わったように真剣な顔になっていて、
完全に自分の世界に入っていた。

いつもだったら私もイメトレとかして
競技に集中している時間なのに。

なぜだか全然集中できない。

『では、選手の皆さんお願いします。』

スタッフの人の声で周りの選手が
ぞろぞろと動き出す。

私もそれに混ざって歩いた。

.

あっという間にまわってきた自分の番。

大丈夫。いつも通り。

練習通り。

自分にそう言い聞かせて
私はスタート姿勢に入ってブロックに足をかけた。

足が震える。

どうして。

『on your marks』

『set』

止まってよ。震えないで。

お願いだから…

パァンッ!!!!

負けるかもしれない。

直感的にそう思った。