家事、お引き受けいたします。【橙】

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向井side




瀬尾ちゃんがもう一度俺の前に現れた時
神様って本当におったんや、って思った。


数年前に一目惚れした人と再会するなんて、
奇跡としかいいようがないやろ？







｢ほんと、向井くんの料理は美味しいよね。｣


向｢ありがとうな。｣







一目惚れって言ってもな、
会ったときは話せるだけでよかったんよ。


だって、瀬尾ちゃんは結婚してるもん。


俺が入る隙なんてないって思ってた。


今だって左手の薬指にはきらり輝く
シルバーの指輪。







でもな。


なんか違うねん。


噴水の前で出会った瀬尾ちゃんと
今、俺の目の前におる瀬尾ちゃんは


なんか違う。







向｢指、大丈夫？｣


｢うん。もう大丈夫。｣







瀬尾ちゃんは｢ほら、｣と言って指を見せてきた。


白くて細い指に茶色い絆創膏は不釣り合いで
なんだか痛々しい。


見ていられなくなって、
俺は両手で瀬尾ちゃんの左手を包んだ。






｢向井くん、？｣


向｢ち、ちちんぷいぷい、
瀬尾ちゃんの指がすぐに治りますようにっ！｣







瀬尾ちゃんが不思議そうに俺の顔を覗き込むから
咄嗟にそんなふざけたことを言ってしまった。







｢ふふっ、向井くんのなら本当に効きそう。｣


向｢き、効くで！最強なんよ！｣







なぁ瀬尾ちゃん、今、幸せ？


ちゃうやろ。


無理してるやろ？


俺には幸せそうに見えないんよ。





あの頃みたいに笑ってや。


また、あの満開の笑顔を見せてほしいんよ。





もし、今そばにいる奴が
瀬尾ちゃんを幸せにできないなら


俺が幸せにする。


もっともっと笑わせる。







だから、俺じゃだめ？

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