引越し祝い ページ9
それから数日。
渡辺さんと会うことはなかった。
日付が変わってしばらくしたような遅い時間に、ばたんと隣の部屋が閉まる音がするくらい。
その音を聞いて、今帰ってきたんだなって思ったりしていた。
…なんの仕事してるんだろう。
最近は忙しかった仕事もちょっとずつ落ち着いてきて、余裕のなかった生活もそれと同様に落ち着いた。
けど、家事は週末まで溜め込んでしまっている。
作り置きした料理もなくなりそうだし。
今日は定時で上がれたし久しぶりに自炊しようかなあ〜と思いながらエレベーターを降りた。
片手には同僚のリナから貰ったお土産の日本ワイン。
上品で繊細な口当たりで、日本食にとっても合うワインらしい。
国産ワインと日本ワインって違うんだよー!日本ワインは日本産のぶどうを使ってないと名乗れないらしくてーと喋りだしたら止まらなさそうだったので、また今度ねと軽く受け流した。
和食かあ、とりあえず肉じゃがとか?なに作ろうかなあとルンルンで歩いていると、
『あ、渡辺さん…』
渡辺さんが部屋から出てきたところだった。
渡「どうも。」
簡単な挨拶。
わたしもこんばんは。と軽く挨拶をした。
「なべー、誰?」
ドアからひょっこり顔を出したのは黒縁の眼鏡をかけた男の人だった。
お友達かな。
渡「ん、お隣のはなむらさん。」
あ、名前覚えてくれてたんだ。
内心ちょっと嬉しかったり。なんて。
「あ!例のお隣さん!?」
パタパタとサンダルを引っ掛けて私の方まで駆け寄ってきた渡辺さんのお友達。
『ぇ、あの。ど、どうも…』
なに、例の。って
渡「ふっか、あんまり馴れ馴れしくすんなよ。」
「えー、いいじゃん別に。なべの友達なら俺の友達でもあるでしょ。俺ね、深澤辰哉。よろしくね、っえーと…」
『花邑Aです。よろしくお願いします。』
深「はい、どーもー。気軽にふっかとか呼んでよ。」
初対面でこの感じあんまり好きじゃないんだよなあ、と思ったけど、嫌な人ではなさそう。
渡「ほら、コンビニで酒買うんだろ。いこ。」
渡辺さんはふっかさんの肩をぐいっと引っ張り連れて行こうとする。
深「えー、俺もうちょっと花ちゃんと話したい。」
『は、はなちゃん…』
深「ん、だめ?Aちゃんって呼んだほうがいい?」
じゃあAちゃんって呼ぼう!と楽しそうに話す深澤さん。
ふんわりとだけど、お酒の匂いがした。
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小豆(プロフ) - しょぉたくんさん» 初めまして。コメントありがとうございます!続編の方開設しました。引き続きよろしくお願い致します! (2020年9月10日 20時) (レス) id: 702e6b81f5 (このIDを非表示/違反報告)
しょぉたくん(プロフ) - 初めまして(^ ^)続編楽しみです(^ ^)頑張ってください(^ ^) (2020年9月10日 19時) (レス) id: 5309a4ac30 (このIDを非表示/違反報告)
小豆(プロフ) - らいなさん» 初めまして、コメントありがとうございます!レトルトのくだり私もお気に入りです笑引き続きよろしくお願い致します! (2020年9月7日 2時) (レス) id: 702e6b81f5 (このIDを非表示/違反報告)
らいな(プロフ) - 初めまして。いつも更新通知楽しみにそわそわしながら、楽しませて頂いてます!レトルトのくだりがツボすぎて思わずコメントしちゃいました笑 更新大変かと思いますが、続き楽しみにしてます!! (2020年9月7日 1時) (レス) id: 5b09cc1f1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小豆 | 作成日時:2020年9月1日 16時