偶然は必然だと教えてください。《青》

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「…本当ですか？待ち伏せとかじゃなく？」


…はぁ？？

何言ってるのこの人。

私が先にエレベーター乗ってきたし、オートロック開けたのも私なのに？


　『あの、何をおっしゃってるかわからないんですけど…』


　「今日引っ越してきてこれかよ…」


ってぼそっと呟いた。

…ん？今日引っ越し？


出社前に見かけた引っ越し業者さんを思い出した。

そういえば、お隣に誰か引っ越してきたような…


　『もしかして、504号室の方ですか…？』


すると男の人の顔から警戒心のようなものがふっと消えた。


　「…え、そうですけど。」

　『私、隣の505号室に住んでます。花邑Aです。』


お隣さんに警戒されっぱなしっていうのもあれだなって思ったから、仕事用の名刺を手渡した。


ありがとうございます。と名刺を片手で受け取る。

…片手で受け取るって、社会人としてどうなのよ。
とも思ったけど、別に仕事外だしお隣さん相手なら仕方ないか。
と多少のモヤモヤは水に流すことにした。


　「俺、渡辺って言います。ってっきりファンかと…」

　『…ファン？』

すると渡辺さんは、いや、何でもないんで気にしないでください。
と言って帽子をさらに深めに被り直した。


　「じゃあ、俺こっちなんで。」

とぶっきらぼうに言い放ち、そそくさと部屋に戻ってしまった。



ぽつんと取り残された私。

…な、なんのなの、あの人。


　『…か、感じわっる…。』

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