雪男 短編集

戦略【あべさく】 ページ5

阿部side


佐久間「あべちゃ〜ん!!今日一緒に帰ろうよ!」
　 「それだけ!じゃね〜！」
阿部「あ、ちょ、佐久間…!?」

楽屋でひとりクイズアプリに没頭していると、突然佐久間がやってきて、そしてまるで嵐かのごとくそれだけ言って去っていった。あまりに急すぎたものだから自分の呼び止める声は届くことなく終わってしまう。
佐久間はいつもこうだから普段は気にしてはいないのだが、たまにあまりに八方美人過ぎて本当に自分の恋人なのかと疑ってしまうこともある。

佐久間「こぉ〜じぃ〜!!撮影行くよ〜!!」
　 「ほら、照も!!」

今も走り去っていったと思ったら、三人での撮影のために康二と照を呼ぶと、二人の間に入って両腕で腕組みをして現場に向かっていく姿が目にちらつく。その腕はなんだ、わざわざ絡ませる必要ないだろ、と思いつつ、結局目をそらせずに佐久間が部屋を出ていく姿を最後まで見送った。


佐久間side


今日は勇気を出して阿部ちゃんに一緒に帰ろう、と誘ってみた。突然声をかけた時の阿部ちゃんの驚いた顔が忘れられずに隠しきれないにやにやを、お得意の元気スマイルでどうにかごまかしつつ、急いで楽屋を後にする。

岩本「佐久間。阿部、めちゃくちゃこっち睨んでたけど大丈夫か？」
向井「せやで、俺、阿部ちゃんだけは怒らせたないわ〜。」

帰り道に何を話そうか、そのままうちに泊まってくれないだろうか、とこの後の妄想を一人で広げていると、突然二人に話しかけられ現実に引き戻される。

佐久間「ん〜？？阿部ちゃんはあれくらいで怒んないから大丈夫！」

そう言うと二人はあきれ顔でこちらを見るが、そんなことは関係ない。それに、同じようなことは何度もメンバーに言われてきたが、その忠告を聞きいれたことは一度もない。なぜなら自分がする行動は全部全部、阿部ちゃんに嫉妬してもらうためでしかないからだ。

いつもあざとい阿部ちゃんの、嫉妬に耐えきれなかった時のあのオス顔、自分だけしか見れない特別って感じでほんとたまんないよね。


ああ、俺ってほんと戦略家。でしょ？阿部ちゃん。

＊続き→←＊続き

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す