雪男 短編集

＊続き ページ13

岩本「…………ふっか〜。」

…っ⁉

部屋に入って数十分、冷静さを取り戻したところで、そろそろ撮影組も帰ってくるだろうと思い、着替えていたところ、いつの間にか背後を取られていたようだ。

突然呼ばれたことに驚いているうちに、後ろから抱きしめられる。さらに、肩に顎をのせられ、照の吐息を間近に感じて、せっかく落ち着いた心臓が先ほどの早さを取り戻した。

岩本「……なんで出てっちゃったの…？」
　 「俺、ふっかが見てくれててすげーうれしかったのに。」

だめだ……。さっきの目が合った瞬間を思い出して返す言葉が浮かばない。
バクバクとうるさい音に焦燥感が募ってさらに言葉を詰まらせる。

岩本「撮影中だって、俺ばっかふっか、ふっかってさ。」
深澤「、それはっ…。」

それは、俺がMCだから。みんなに平等に振らないといけないから。って言いたい。けれど、俺の何気ない言葉にいつも一番に突っ込んでくれるのは照だし、俺のボケに一番笑ってくれるのだっていつだって照だ。

岩本「…ふっか。俺、ずっとふっかが足んない。」
　 「もっと名前呼んでほしいし、もっと褒めてほしい。お願い。」

…照はほんとずるい。俺よりでかい体で抱きしめておきながらかわいいこと言って。
結局毎回ほだされちゃってんの俺だし。こうされること望んでるのだって俺なのに。

深澤「…………俺だって…。さっき目あった時、照、すぐそらしちゃうから…。
　 自分ばっか余裕ないんだって、恥ずかしかったっ……。」

そう言って後ろに向きなおって抱きしめ返すと、満足そうな顔を見せた後、先ほどよりもいっそう強い力で、足りていなかった分を取り戻してやると言わんばかりに抱きしめられる。

深澤「……ほんと、照不足なのは俺の方だから。」

先輩【いわふか】【だてなべ】【あべさく】→←不足【いわふか】

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