7 ページ7
『…何でって、その方が都合いいじゃん』
「なーにそれ。いつからそんなに冷たいのー？」
『冷たい、とかじゃなくて』
口調は柔らかいけど、少し目が据わってる深澤が眼鏡を外したと思ったら私の言葉を遮るように唇が重なる。
「…このまま抜けちゃう？」
『…駄目でしょ、飲み過ぎ。戻るよ？』
「やーっぱ、冷たいじゃーん」
「…ふっかさん、平気？」
「…めめ」
ふざけてる深澤の背後に、心配そうに様子を見に来たであろう背の高い「めめ」と呼ばれた男の子。
芸能人に疎い私でも、見たことのある人。
『深澤さん、結構酔ってるみたいです』
「マジっすか、すいません」
『…いえ』
「Aさんは、大丈夫ですか？」
『…え？』
「あ、いや。何か悲しそうな顔してたんで」
…悲しそうな顔。
なんて、してたのかな。
初めて会った目黒くんに、そんな風に言われてビックリする。
「おーい、めめ。ナンパすんなって」
「ふは、何それ。ふっかさんには言われたくないわ」
主催の男性の「カラオケ行くぞ」って声が聞こえて来て。
誘ってくれた女の子には申し訳ないけど、今日はすぐ帰ろうって決めたしそんな気にはなれなくて。
『…私は、帰りますね』
「じゃあ俺、タクシー拾いますね」
『え、大丈夫です！目黒くんは戻って下さい』
「タクシー乗ってくれたら、戻ります」
『…』
「ふっかさん、先行ってて。俺入り口まで送ってくるわ」
深澤の返事も、私の返事も聞くより先に入り口に向かう目黒くん。
…何か、マイペースな人なのかな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 641人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白雪
| 作成日時：2023年3月19日 23時
