7(side T) ページ8
初めて会った日、白石さんに連絡してみたもののありきたりな挨拶しか出来なかった。
ボーッとアイスラテを飲んでたら返信来たから、何か気付いたら電話しちゃってた。
電話越しのハスキーな声に何かドキッとして、こんなんで撮影保つのかなって自分でもヒヤヒヤした。
そんなこんなで、あっという間に撮影の日々が始まって。
白石さんは初めての芝居だと思えないくらいの表現力。
アーティストさんって凄いな、て感動して負けじと熱が入る。
毎日一緒に過ごしていたら、いつの間にかすっかり打ち解けて。いつもなら撮影が終わるまで誰とも馴染めずに終わってしまうことが多いけど、何か違った。
何が違うのかは、うまく説明出来ないけど。
多分、これは俗に言うアレだ。
『玉ちゃん』
「うん?」
『考え事?』
撮影の合間に食事を摂る時も、何か離れたくなくてずっと一緒。距離感が嫌だから、玉森さん呼びも敬語もやめて貰った。
Aちゃんがいつも良い香りをさせてるのがズルいんだよな。アレ=恋だと自覚するには時間はかからなかったけど、どっかでブレーキをかけてる。
でもやっぱ、恋人役な訳だから。撮影中はブレーキを外して挑むけど…Aちゃんは平然としてる。
…何かムカつくから、頬っぺたをつねる。
『なに』
「マシュマロみたい」
『ディスってるの?』
「ぜーんぜん。褒めてるの、お肌綺麗ねって意味」
「たまー!!」
せっかく束の間のイチャイチャタイムかと思ったのに、俺を呼ぶ聞き慣れた声に現実に引き戻される。
「何でいるんだよ」
「酷くな〜い?差し入れ持って可愛いたまに会いに来たのに」
「ウザい」
『あ、お疲れ様です。』
リラックスしてたAちゃんの表情が一気にオンになって、立ち上がって深々とお辞儀してる。
「初めまして、宮田です!いつもたまがお世話になってます!」
『こちらこそお世話になってます』
「固い固い!宮っちで良いからね〜!」
「宮っち、邪魔すんな」
「何を?」
絶対こいつ分かってんだろ。腹立つなー!
Aちゃんは、俺達のやり取りを楽しそうに眺めてる。
スタッフも次々に宮田に挨拶をしに来て。
「じゃ、俺はこの辺で!Aちゃん、またね!」
『はい、ありがとうございました』
「たま、頑張れよ?」
帰り際に耳元で言われた言葉。
…分かってるよ。
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作者名:白雪 | 作成日時:2023年1月28日 1時