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突然抱きしめられて動揺する彼女に気付いていたけど、俺は溢れる涙を止めることができなくて。
何も話せないまま、ただただ泣きながら抱きしめた。
壊れないように、消えないように、そっと。
ただ、そこにいる彼女の存在を確かめるように。
それから、どれ位時が経ったのだろう。
彼女は俺が泣いていることに気付いてから、逃げ出すこともせず、大人しく抱きしめられたままポンポンっと俺の背中をリズムよく叩いた。
＿＿＿＿それは、Aが昔俺をあやしてくれた時のようで、余計に俺の涙腺をゆるくさせた。
阿部「っ、ごめん。」
ようやく落ち着いて、俺はそう言って彼女に声をかける。
抱きしめた腕は緩めずに。
「いえ。……あの、大丈夫、ですか？」
その違和感に気付いたのか、彼女が申し訳なさそうに声をかけてくる。
大丈夫じゃないよ。
全然、大丈夫なんかじゃない。
だって……、
阿部「……どうして、言ってくれないの。」
「え？あ、えっと、？何のこと、ですか？」
あくまで、渡辺Aとして答える彼女に、俺は、納得出来ず、少し体を離して彼女の目を見つめた。
阿部「……ねぇ、この絵を見て、俺が気付かないと思ってるの？」
「え？え、」
驚いて目を見開く彼女を無視して俺は子どもみたいに、責めるように言葉を続けた。
阿部「君は、椎名A、でしょ……？」
目の前の彼女が、Aの名前に反応して息を飲んだ。
あぁ、やっぱり。
その仕草が、答えだ。
知ってるんだよね、彼女のことを。
いや、知ってるなんておかしいのか。
彼女は彼女自身なのだから。
自分でAにそう問うたのに、また、涙が流れた。
でも、その涙を拭う余裕はない。
一瞬でも、一秒でも、目の前にいる彼女を見逃したくないから。
見た目は全然違うAに、俺はまた、「A」と、彼女の名前を呼んだ。
彼女は、絶対、椎名Aだ。
非科学的だけど、方法もわからないけれど、納得できる理由なんて見つからないけれど。
それなのに、何故こんなに俺自身が確信を持っているのか分からないけど。
阿部「A」
「っ、」
二度目に俺が彼女の名前を呼んだ瞬間。
彼女の大きな瞳から、俺と同じように涙が零れた。
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たぬ(プロフ) - 朝桐さん» 最後まで読んで頂けただけでも嬉しいのに、宝石みたいにキラキラした素敵な感想をありがとうございます。頂いた言葉全てが宝物です。こちらこそ出逢ってくださりありがとうございました。 (3月21日 23時) (
レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました！涙なしでは見れなくて、とても生きててよかったと、見れてよかったと。運命といいますか奇跡にただ救われました。執筆活動お疲れ様です。今後のたぬ様の日々が愛に溢れますように。本当にありがとうございました！ (3月18日 22時) (レス) @page43 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - みみみさん» お読み頂き、素敵な感想までありがとうございます。楽しんで頂けたのなら本当にすごく嬉しいです！こちらこそ、ありがとうございました！ (9月6日 23時) (レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - 今日初めて見つけたこの作品、１話から今まで全部いっきに読みました☆本当に素敵な作品でした😊ありがとうございました！！ (9月2日 17時) (レス) @page43 id: 10d256d720 (このIDを非表示/違反報告)
たぬ(プロフ) - 桜色さん» とっても優しくて愛のある感想を送ってくださってありがとうございます。どの言葉もとても勿体ないくらいですごく嬉しいです。最後まで読んで下さってこんな素敵な感想まで下さって、こちらこそありがとうございます！ (6月5日 22時) (レス) id: dc32266bd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たぬ | 作成日時：2022年8月24日 22時
