冬の匂いに包まれて【雪】 (ページ7)

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「あ、Aさん。さっき管理課から落とし物の電話きてましたよ」

『え、なにか落としたっけ』

「社員証」

『うそ……ほんとだ、ない』

「はぁ、これで何回目だと思ってるんですか」

『3……４回目とか？』

本当になぜかは自分でも分からないけど
落とし物することが人並みよりはるかに多い私

この前は駅で定期券落としたし
カフェに携帯忘れたり、トイレに化粧ポーチ忘れたり
ビニール傘を買ったその日に置いて帰ってくることなんて日常茶飯事

ビニール傘って持ち帰ってくることのが難しくない？
なんて言ったら、目黒に鼻で笑われたっけ

「なんでこんなんなのに、仕事はできるんですかね」

『褒められてる？けなされてる？』

「さぁ？」

『ねぇ、目黒の教育係誰だったか忘れてないよね？私先輩なんだけど』

少し大げさにぶーぶー言ってたら
目黒がデスクの引き出しから何かを手に取って
これあげるんで、って男らしいごつごつした拳を差し出してくる

少し怪訝な顔をしながら覗き込めば
開かれた手のひらには、ころんと四角いキャラメルが1つ

『ん、しょうがない。許してあげよう』

「ふは、Aさんまじでちょろい」

『ねぇ！だからそういうところだってば！』

こんなやりとりを毎日してる私達
周りの先輩や後輩には、まーたやってるよって言われる始末

もらったキャラメルをそっと指で持ち上げて
口の中へ入れればカフェオレとはまた違う甘さに頬が緩んだ