冬の匂いに包まれて【雪】 (ページ45)

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やっと止まった涙が、また溢れてくる

深澤さんの前だけでは泣きなくなかったのに

「だって俺が優しくしなきゃ、誰がAを優しくすんの？」

『え？』

「なんでミスしたかも全部わかってて。ちゃんとそれも反省してて。もう絶対Aは同じミスしないもん」

『そんなの、分かんないじゃないですか』

「俺が言うんだからそうなの！」

『ふふ、なんですかそれ』

やぁっと笑った～～、っていまだ私の手を握ったまま
そのまま天を仰ぐ深澤さん

握られた手を見れば、相変わらず白くて綺麗な手
そんなところも好きだなぁって。

思わず、小指をぎゅっとにぎる

『……好き、です』

ぽろっと出てしまった“すき”の言葉

ずっとずっと大事に温めてきたのに

後輩のポジション手に入れたのに

あぁ、これで終わっちゃうんだ

そう気づいたら、思わずまたぎゅっとしてしまった

「A？俺の指折れちゃうよ？」

『···ぁ、ごめんなさい』

なが、された？よね？

深澤さんはなかった事にしたいのかな

そっかそっか
そしたらもう後輩を一生懸命演じるしかないじゃん

『···えっと、今日のお礼を必ずするので！今日はもう帰りましょ？ね？』

ほら、もう廊下も真っ暗ですし！って言いながら
慌てて手を離して立ち上がる

泣きたいのを我慢して
デスクに置きっぱなしの物を片付けようとすれば

座ったまま伸ばした深澤さんの足が
そのまま私の脚首をがしっとはさんだ

『え？』

とまどいが隠せなくて、思わず声が出る

『っ、あの』

「今日そんなオシャレしてどこ行く予定だったわけ？」

『え？』

「そんなかぁいいスカート履いて、髪までまいちゃって？なんかいつもと匂いも違うし」

『や、あの。予定なんてない、です』

「ふーん？」

『ほんと、です。深澤さんの代理を頑張って努めようと自分に気合をいれてみた、と言いますか。結局迷惑かけちゃいましたけど』

正直に白状すれば、盛大にため息をはく深澤さん

かと思えば、また手を握られ
気付けば深澤さんの脚の間にすっぽり立っている状態

阿部ちゃんに騙された、ってぼそぼそ呟く深澤さん

さっき振られたんじゃないの？私は。

ほんと、ずるい