冬の匂いに包まれて【雪】 (ページ43)

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「え、なにこれ？わら」

オフィスの雰囲気に戸惑いつつ
スーツケースをゴロゴロ引きながら
あ、お土産ここ置いとくからみんな取ってってね～！って明るく声を張る深澤さん

「んー、で何があった？」

私の横にきた深澤さんは、一瞬で仕事モードに切り替わる

スーツのジャケットを椅子に掛けて
シャツをめくりながら私に質問する

『あの、□□会社の今日締め切りの発注分ミスして500部足りないと今先方から連絡が』

「なんでミスした？」

『っ、大変申し訳ございません』

「俺謝れなんて言ってないよ。なんでミスしたの？」

『……最終確認を怠りました』

「よし、わかった。今できることやろう」

頷いた深澤さんは、私のおでこをこつんとデコピンしてから
近くにいた人たちに的確に指示をとばし始めた

んで、最後は～、そう言いながらどこかへ電話しだす

謝罪してる声が聞こえたから恐らく先方の社長だろう
あぁ、深澤さんにまで謝らせてなにやってんの私は。

自分の仕事をしながら、深澤さんの声に耳を傾けていれば途中で笑い声すら聞こえてきた

最後は笑顔で電話をきった深澤さんに、思わず急いで駆け寄った

『あの！先方は……？』

「んー？あそこの社長ねぇ、毎回結構余分に発注してくんのよ。まぁこっちとしたらありがたい話なんだけどね？だからとりあえず、最低限必要な部数をね」

あとは～、って言いながらふらっと席を立ってまたみんなに声をかけてゆく
どれぐらい在庫あった？お。いいね！なんて言いながら。

その姿があまりにもかっこよくて

思わず目で追う事しかできなかった

「よっしゃ！終わり～～～！」

深澤さんの声に思わず湧き上がるオフィス

「あの！みなさん！」

私の声にみんなが振り返る

『本当に申し訳ございませんでした。そして、ありがとうございました！！』

謝罪とお礼をできる限り心を込めて。

俺たちもAに任せっぱなしでごめんな。
Aの今週の働きすごかったぞ！

って、そんな私に労いの言葉をかけてくれた

あぁ、深澤さんはみんなの空気まで優しくできるんだ
本当にすごい。本当に……

未だ騒いでいるオフィスに静かに一礼をして
その場を去って、給湯室に逃げ込んだ