冬の匂いに包まれて【雪】 (ページ37)

今日:13 hit、昨日:16 hit、合計:132,154 hit

・ページ37

今日はお得意先と打ち合わせのあと
そのまま直帰命令が出た

ひっさびさに早くお家に帰れる…！

たまには自炊でもしようかな、と思い立ち
いつもは総菜のパックしか買わないスーパーに立ち寄る

……ん、カレーでいいか
普段料理しない独身女性のレパートリーなんて、所詮こんなものだ

スーパーの自動ドアをくぐれば
先ほどまでの空とは比べものにならないくらいどんよりしていて、アスファルトをじわりじわりと濡らしていた

『せっかく、朝教えてくれたのになぁ』

厚い雲に覆われた空をみて呟く
直帰に浮かれて、折りたたみ傘の存在なんてすっかり忘れていた

「あれ、今朝ぶりですね」

『あ、お隣さん』

自動ドアから出てきたのは、まさかのお隣さん
湿気のせいなのか、今朝よりもちょっと髪がぽわっとしていてなんだか可愛い

「ふふ、お隣の宮舘と申します」

『あ、Aです。すみません失礼なことを……』

「いえいえ、お気になさらず。それより、その様子だと傘忘れました？」

『直帰に浮かれた成れの果てです……』

「あははっ、それはしょうがない」

宮舘さんが突然声をだして笑うから思わずびっくり

まゆげが八の字になって、目がくしゃってなって……
え、可愛すぎでは？？

「よかったら入りますか？」

『へ！？』

「可愛らしい女性を濡らすわけにはいかないので」

あぁ、なんてスマートなの

どうぞって傘を少し傾けてくれるから
意を決して、宮舘さんの横に並んだ

桜が舞う雨の匂いにまぎれて
ふわっと香る宮舘さんの匂いにドキっとした