冬の匂いに包まれて【雪】 (ページ30)

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〇橙×カフェ店員ページ30

〇橙×カフェ店員

『こんばんは～』

「お、来た来た！いらっしゃい！」

今日も笑顔で迎えてくれる向井さん

最寄り駅から大きな道を二本越えて
目印となるコンビニが見えたらそこを左へ
少しだけ細い路地を進むと温かい光が迎えてくれる

扉をそっと押すと
ふわっとコーヒーの香りが全身を包む

『いつものでええ？』

「はい！お願いします」

L字型のカウンターの奥に座れば
ちょっと特徴的な優しい関西弁が届く

ここが私の特等席

壁には不規則に飾ってある写真たち
向井さんの趣味はカメラなんだって、以前楽しそうに話してくれた

『あ、新しい写真…』

「んー？あ、それなちょうど昨日撮ったやつ」

『……なんですか？これ』

「友達の襟足！」

『ふふっ、ほんとだぴょんってしてる笑』

「また襟足ブームが来るから！って今伸ばしてるんやって」

ほんまアホやねん、って言いながらも
向井さんの顔は楽しそうでその人のことが好きなんだなぁって分かる

友達の襟足だという写真のすぐ横には梅の花の写真が並んでいた

『もう、春ですね』

「お、気づいた？」

『梅の花も新作ですか？』

「そうそう。この梅な、近所にあるんよ」

『へぇ～。いいですね』

まだまだ寒いと思ってたいたけれど
どうやら、春の訪れはもうすぐそこまで来ているらしい

ここへ来て２度目の春

あっという間の1年間

果たして私は少しでも成長できたのだろうか、
そんな事を考えながら、そっと写真に触れた