冬の匂いに包まれて【雪】 (ページ23)

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『ラウくん今日お仕事だったんじゃ…？』

「もう終わった！だから宿題とかプリントとかまとめて取りに来たんだ～」

『そっか。お疲れ様！』

「っ、うん。ありがと！」

ちょっと恥ずかしそうに笑うラウくん
数日ぶりに会うラウくんはなんだかいつもよりもかっこよくみえて困っちゃう

思わず顔が熱くなったのをごまかすように髪をそっと耳にかけた

「それさ、俺のノートだよね」

『あ、ごめんまだまとめきれてなくて』

「ううん！むしろ俺のほうこそごめんね。無理させちゃって」

『っ、無理なんて思ってない！私が好きでやってることなの！』

私の思わず出た大きな声に、静かな沈黙が流れた

聞こえるのは部活終わりの子たちが
ガシャンガシャンって自転車置き場から降ろす音とかすかに聞こえる話し声だけ

無理なこと、なんて決めつけてほしくなくて。

ノートをまとめてる時間が私にとってはラウくんの事を想う大切な時間だったことに改めて気づいた

「俺ね、Aちゃんの字が好きなの」

『え？』

「いつも書いてくれる雪だるまの絵も可愛くてすき」

『……雪だるま』

「うん。ノートは３色なのに雪だるまだけは９色だよね」

『気付いてたんだ』

「当たり前じゃん！ノート渡してくれる時、お疲れ様って毎回言ってくれるのもすき」

ラウくんの“好き”が届くたびに胸がぎゅってなる

好きって言われてるのは…私の字。雪だるま。お疲れ様って言葉。

それでも夢みたいに嬉しくて、私よりも断然高い位置にある目をじっと見つめていれば、ふっとラウくんが視線をはずした

「えーと、だから！そう！これAちゃんに渡したくて！」

ちょっとあたふたしながら、差し出してくれたのは白いリボンがかかった綺麗な箱

『え、私に？』

「うん。Aちゃん、いつもありがとう」

『っ、嬉しい！ありがとう！』

「へへ、逆チョコ大成功！」

逆チョコ？と小さく呟けば、あっ、って顔をしたラウくん

バレンタインだからさ、って照れながらへへって笑うラウくんが可愛くて。

『はい、これ』

「え？」

『……バレンタインだから』

おそるおそるラウくんを見上げれば

そのまま箱ごとぎゅっと手を繋がれて、

「Aちゃんが好きです。つきあってください」

また、夢みたいな言葉をくれた。

fin.