冬の匂いに包まれて【雪】 (ページ27)

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『あの……大変申し訳、「A」

俯きながら絞り出した声は、横から聞こえたさっくんに遮られた。

気持ち悪かった手はさっと振り払われ、
私を隠すように前に立ってくれる大きな背中。

そして、見えないように後ろで私の手をぎゅってしてくれる。

佐「お客様。彼女はうちの大事な従業員です」

「お前なんなんだよ！」

佐「お店の利益のために、大事なスタッフを売るような事は絶対しません。それでもと言うなら、もうご来店くださらなくて結構です。」

さっくんの堂々とした強くて凛とした声。

そんなさっくんを見て、お客様のうちの1人も
お前もうそれくらいにしとけ、と声を荒げた人をなだめてくれた。

佐「ご理解いただきありがとうございます。追加のご注文は以上でよろしかったですか？」

「……美味いの頼むよ」

佐「かしこまりました。心を込めてお作り致します！」

先程とは嘘のように明るくはじけたさっくんの声。

後ろ姿しか見えないけど、きっといつものくしゃっとした顔が容易に想像できる。
だってほら、お客さんの顔も笑顔になってるもん。

すごいな、さっくんは。私とは大違いだ。

“失礼します”というさっくんの声とともに
繋がれていた手がぱっと離れた。

『あっ、』

思わず、小さく声がもれた。