理由 ページ9
翔太:side
「姉さん、甥っ子達へ
お久しぶりです。
急にAを預けてしまって、申し訳ありません。
澪が亡くなってから、もうすぐ半年を迎えます。
この半年間、Aと2人で頑張って生きてきました。
でも育児に家事、そして仕事に追われる日々。
そんな日々が、どんどん僕に余裕を与えてくれなくなりました。
家には、溜まっていくゴミ。
時間関係なく、泣くA。
赤ちゃんだから、泣くのは仕方がない事だって分かっています。
でもそれが繰り返されて、泣き声が耳障りになってしまって…。
一度だけ、手を挙げてしまいそうになりました。
僕と澪の宝物に…。
今の生活が続けば、次は本当に手を挙げてしまいそうで、怖くて怖くて堪らなくなって…。
何も言わず姉さんに渡した事、迷惑をかけている事、親失格な事だと重々承知しています。
でも……Aの幸せを考えたら、こうするしかなかったんです。
本当にごめんなさい、駄目な親でごめんなさい。
僕自身に余裕が出来て、Aをまた育てる覚悟が出来た時、Aを迎えに行きます。
それまではどうか、Aをよろしくお願いします。」
「……これが、光希がAくんを預けた理由…みたいね。あともう1枚には、Aくんについて色々と書いてあるわ」
母さんが読み上げた手紙の内容。
光希さんも苦しんでたんだって事が、ひしひしと伝わってくる。
けど……。
「だったとしても、何も言わずにAを置いていったこと…俺は許せない」
「翔太…」
「俺も、そう思う。限界だからって、やっちゃいけないことだと思う。そんで、余裕が出来たら迎えに来るって…勝手にも程がある」
「照まで…」
「そうだな。2人の言い分、すっごい分かる」
俺の意見に賛同するように、照も思いを吐いた。
俺らが否定的な事を言うもんだから、大兄と涼太が少し悲しそうな声で俺らの名前を呼んだ。
そんで、辰兄も俺らの意見に賛同してくれたし同じかなって思ったら、「でも」って言葉を続けた。
「あの子を育てる上では、関係ないよ。どんな理由であれ、俺達はあの子を育てる事を決めたでしょ？だったら、なんでもいいよ」
ふわり、そんな効果音が付きそうな笑顔で辰兄が言い切った。
何時もはいじられ役の癖に、やっぱり俺の兄貴は格好いい。
まぁ、絶対に言ってやんねぇけど。
「ねぇ、その顔うざい」
「ねぇ！なんでそんな事言うの？！」
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作者名：字の人 | 作成日時：2023年5月31日 0時
