ちいさな宝物。春 (ページ8)

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家族会議ページ8

大介:side

「Aくん寝ちゃいそうだから、ちょっと寝かしてくるわ〜」

そう言って、辰兄が布団が敷いてある座敷に行って数分。
Aくんの荷物であろう、パンパンに物が詰められた手提げ袋を持って戻って来た。

「照と康二戻って来たし、ちょっと会議しまーす」

ローテーブルに荷物を置き、1人用ソファーに腰掛けた辰兄を筆頭に、それぞれローテーブルを囲うように置いてあるソファーに座っていく。
皆が座ったのを確認して、辰兄が口を開いた。

「うし、まずはこれ。Aくんの荷物。服と肌着が数着しかなくて、おむつもこんだけ。おもちゃと人形、あとはミルク缶と哺乳瓶」

ひとつひとつ取り出しては、ローテーブルに並べて見せてくれる辰兄。
次は何が出てくんのかなって待っても、何も出てこない。

「……え？こんだけ？」

「そ。こんだけ」

「いやいやいや、少なすぎでしょ！こんなんじゃ、おむつ3日ももたないじゃん！」

「だから、今度の休みは必要なもんの買い出しなぁ」

「大介、車出し頼むわぁ」なんてゆるーい感じで言われ、ちょっと拍子抜け。
とりあえず、買い出すものを話し合ってまとめて、次の休みが空いている俺と辰兄、あとは俺達が余計な物を買わないように見張りとして亮平と一緒に行く事になった。
俺と辰兄、いい歳なのに中学生の見張りって…笑

会議、なんて言うからもっとなんか真剣な話するかと思ってたから、まじで拍子抜けしちゃった。
張ってた気を抜いて、ソファーの背もたれにもたれ掛かる。それと同時に、辰兄が「もう1つ」と声を上げた。
それに釣られて、もたれていた背もたれから起き上がり、辰兄を見る。

「母ちゃん、さっきの」

「えぇ」

辰兄に言われ、母ちゃんがポケットをゴソゴソとしている。
それを眺める俺ら。
何かを取り出した母ちゃんの手元を見ると、一通の手紙。
差出人やら、宛名などは何も書かれていなかった。

「これね、さっき座敷でAくんの荷物を見た時に、見つけたの。多分、光希さんから。1人で読むのは違うなって思って、母ちゃんに預かっててもらったんだ。……じゃ、母ちゃん、お願い」

辰兄の声に頷いた母ちゃん。
封筒から手紙を取り出し、ふたつ折りになっている紙を広げ、ひとつ深呼吸。
「じゃあ、読むわね」そう言って、手紙の内容を読み始めた。