ちいさな宝物。春 (ページ6)

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ディナータイムページ6

涼太:side

「いただきます！」

辰哉兄さんの掛け声に続き、皆でいただきますと声を揃える。
各々食べたいものを皿に盛っては、食べる。
9人兄弟、しかも男しか居ない食事なんて、ちょっとした戦争だ。

「あ！蓮くんがぼくのお肉とった！」

「早いもん勝ちだろ！」

「こーら、喧嘩しないで仲良く食べな」

「「はぁい…」」

特に、蓮と真都。
よく喧嘩して、それを止めるのが辰哉兄さん。
この会話はもう日常茶飯事。
作った側としては、取り合いする位食べてくれて嬉しい限り。
今日は特に、母さんも一緒に作ったから余計に取り合っている。
ふと、正面に座る辰哉兄さんと膝に座っているAくんを見た。
母さんに、Aくんは1歳になっていると聞いたから、3回食かは分からないけど、食材を細かく切り、味を薄目に付けた特製の離乳食を一応作って出した。

「ほい、Aくん。あーん…」

「…兄さん、どう？」

「……うん、大丈夫！ちゃんと噛んでるし、食べれてるよ。ありがとな、涼太」

「良かった…」

周りをキョロキョロしながらも、ゆっくりと食べ進めるAくんに安心する。
光希さん、ちゃんと離乳食進めてたんだ。
その事にホッとすると同時に、やっぱり何でだろうって思ってしまう。
どれだけ考えたって、分かるはずもないそれを頭の片隅に押し込んで、皆んなで囲む食事に意識を向けた。

どれだけ沢山の量を作ったとしても、相手は男8人。
30分も経たないうちに、あの大量のおかずが姿を消した。

「美味しかった！！ごちそうさまでした！」

「はい、お粗末様でした」

ご馳走様、と次々に食べ終える皆。
完食してくれると作った甲斐があるよ、本当。

「はい、最後の一口だぞー。…ん、よく食べました。おててパッチン、ご馳走様でした」

「…た！」

Aくんも食べ終えたみたいで、丁度手を合わせている。
出したお皿を見ると、量を少なく出したものの、完食で無意識に頬が緩む。

「お、涼太…ふははっ！お前、顔ゆるっゆるだぞ笑」

「え…。そんなに？」

「もうね、今までにないくらいゆるっゆる笑」

「いやだって、完食してくれて、こんな顔みたら緩んじゃうでしょ？」

「えー？…あー、うん。わかるわ、緩む」

「でしょ？」

そんな会話を、俺の顔を見て笑ってきた翔太と交わす。
褒められてニコニコのAくんを眺めてたら、康二に「にいたち顔ゆるゆるや！」と突っ込まれてしまった。