爆弾発言 ページ4
辰哉:side
「光希？」
「…姉さん」
「どうしたのよ？家で待っててくれてよかったのに…あら、この子がAくん？」
「うん、抱っこ…してくれる？」
「いいの？…よいしょ。初めまして、Aくん。ふふっ、可愛いわね、澪さん似かしら？」
「姉さん、これ。Aの荷物」
「……え？荷物って…どういう事よ、光希」
「………ごめん、姉さん。…ごめんなさいっ！」
「ちょっ…！ちょっと、光希！」
「そのまま、走り去ってしまったの。今は何処にいるのか、分からないわ」
母ちゃんは、目に涙をためながら腕の中に抱えているAくんを見つめている。
俺達もまた、同じように見つめる。
「じゃあ、Aくんはどうするん？ママもパパもおらんくなってしもうて、こんなちっこいのに…」
震える声で、康二が言った。
泣き虫な康二の事だから、今にも泣きそうなんだろうな。
横に居た大介が、康二の肩を抱いている。
康二の言葉に、母ちゃんが康二を見つめながら言い放った。
「光希が私にこの子を託した理由…何となくわかるの。私が、9人の男共を育てたからかなって」
「男共って…言い方よ、母ちゃん笑」
「ふふっ笑。…けど、私にも仕事があるし、また海外に戻らなくちゃいけないの。だから、無理を承知でお願いするわ。貴方達9人で、この子を育ててほしいの」
母ちゃんの発言に、俺達は言葉を発する事が出来なかった。
だって、それだけ急で爆弾発言だったから。
「……ちょっ…と待って。え？どういう事？俺達が…？」
「えぇ、そう。貴方達が、この子を、育てる。真都を小さい頃から見てるし、出来なくはないでしょ？」
「いや……出来なくはないけど…」
未だ困惑し続ける翔太が唯一発した言葉に、先程までの涙は何処へやら。
ケロッとした表情の母ちゃんが、有無を言わせぬ圧力で言葉を放つ。
「どうか、お願い。貴方達にしか頼めないの」
チラッと、俺の方へ目を向ける母ちゃん。
その目には、「はよ、返事しろ」って圧が…笑
俺、その目に弱いんすよ…。
それを分かって、やってるだろうけど。
はぁ…と溜息をひとつ吐き、俺は言葉を紡いだ。
「誰か反対する奴、いる？」
俺の言葉に、首を縦に振る奴は居なかった。
…優しい奴らなんですよ、俺の兄弟達って。
反対意見もなく、何も言わないのは皆の意思が固まった…と受け取って、俺は母ちゃんへ返事をした。
「俺らで、面倒見るよ。Aくんの事」
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作者名：字の人 | 作成日時：2023年5月31日 0時
