ちいさな宝物。春 (ページ20)

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保育園ページ20

辰哉:side

ただ今、朝の7時。
抱っこ紐でAくんを抱っこして、片腕には俺の荷物。
もう片腕には、Aくんの保育園用の荷物。
まぁ、着替えだけしか入ってないけど。

今から行くところは、家から徒歩15分位のところにある、俺ら兄弟全員がお世話になった保育園。
駅近で、朝の7時から開いているから、早い時間から仕事をしている親御さんにも人気の保育園だ。
Aくんの事で話をしたいから早く来たけど、園長先生ってこんな早くから来てるのかな？
来てますよーにって祈りながら、ようやく着いた保育園の門をくぐり玄関を目指す。
チラホラと子どもを預ける親御さんと軽く挨拶を交わしながら、俺も先生の元へ。

「おはよーございます…」

「はーい！おはようござ……あれ？！もしかして、辰哉君？！」

「あ、はい。お久しぶりです」

「えー！大きくなったね、ビックリした！今日はどうしたの？……って、え？Aくん？」

「んぶぁ！」

「あー、はい笑。この事でちょっと話したくて…。園長先生ってもう来られてますか？」

「あ、来てるわよ！どうぞ、入って？」

「ありがとうございます」

顔見知りの先生に用意してもらったスリッパに足を通して、職員室へと案内されれば、これまた見知った顔の園長先生とご対面。

「園長先生、お久しぶりです」

「あら、辰哉君…だったわね。久しぶりね。皆さん元気にしてるかしら？」

「はい、毎日うるさいくらいです笑」

「そう、それは良かったわ笑。立ち話もなんだし、こっちに座りなさいな。それで、今日はどうしたの？」

簡易カップにコーヒーを入れてくれた園長先生と向かい合って座り、抱っこ紐を外す。
抱っこされていたのがAくんだと分かると、当たり前だけど、園長先生に驚いた顔をされた。
俺がAくんを連れてきた経緯を説明すると、園長先生が少し困り顔で「そう……」と呟いた。

「じゃあ、今、Aくんのお父さんは何処にいるのか分からない状態なのね？」

「そう…ですね」

「送り迎えの件は、承知しました。先生間で共有しておきます。何かあれば、連絡も…」

「あ、出来れば俺の携帯か、家の方にしてもらえれば…」

「分かったわ。ありがとうね、しっかり話をしてくれて。もし困った事があれば、何時でも相談しなさい」

「いや、こちらこそ早い時間にすみませんでした。ありがとうございます」

これで、何とか大丈夫そうで安心する。
ほっと一息をつき、入れてもらったコーヒーを啜った。