ちいさな宝物。春 (ページ2)

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桜の季節ページ2

辰哉:side

4月。
桜の花弁がヒラヒラと舞い落ち、地面を彩っていく。
まるで、桜の絨毯のよう。
その絨毯の上を、ゆったりとした足取りで歩く。

この4月から大学3年生に進級した俺は、朝から必要書類を貰いに大学へと赴いていた。
今は、その帰り。

「すげぇなぁ…桜」

立ち止まり、見上げながらそう呟く。
そしてまた歩を進める。
数メートル進んだ時、ポケットに入れていた携帯が振動した。
画面を見ると、トークアプリの通知。
アプリを開き、メッセージを確認する。

「あれ、母ちゃん帰って来たんだ」

メッセージの送信者は、俺の母親。

【帰った。話があるから、早く帰って来い。】

母ちゃんらしい文面に、少し笑ってしまう。

【了解】

そう返信し、家路を急いだ。

「ただいまぁ」

家に着き、玄関からそう声を掛ける。
すると、奥からドタドタと騒がしい足音が響き渡り、勢い良く腹部に飛び付いてきた。

「辰くーん！おかえり！！」

「ただいまぁ、真都」

九男の真都。
俺が…俺だけじゃないな。
兄弟が帰って来た時、必ずこうやってお出迎えをしてくれる。

真都とは13歳も年が離れているから、可愛くて仕方がない。
そんな可愛い真都と、手を繋いでリビングへと向かう。
リビングのドアを開ければ、兄弟全員勢揃い状態で、俺が最後だったみたいだ。

「ただいま。ごめんね、遅くなって」

「おかえり、辰哉。帰って早々悪いけど、皆に話があるの」

真都が椅子に座るのを見届け、俺も空いている椅子に座りながら見た母ちゃんの顔は、真剣そのもの。
それに釣られるように、俺も真剣な表情になる。

「まずは、ただいま。皆、元気そうで良かったわ」

「母ちゃんも元気そうで良かったよ」

「えぇ、父さんも元気だから心配ないわ。それで、話なんだけど……」

そう言って口篭る母ちゃん。
黙ってしまった母ちゃんを見つめる皆の目に、不安が募る。
ひとつ、息を吐いた母ちゃんが徐に立ち上がった。

「ちょっと待ってて」

そう言って、居間にある小上がりの座敷へと向かって行った。
少しして戻って来た母ちゃんの腕には_____

とてもちいさな赤ちゃんが抱かれていた。