No.30 ページ32
阿部side
「お母さん調子どうなの？」って
仕事終わり家が同じ方向の人達を乗せて走る車の中、
ふっかがAに聞いていた。
「あー、ぼちぼちです」
「家､誰かお手伝いしに来てもらってるの？」
「いや、俺と兄弟だけっす」
「… あ、そーなんだ」
「大丈夫？」
「大丈夫っす」
車の空気が一瞬固まった。
普通な雰囲気でそんなこと言ったから。
てっきり誰か親戚の方が来てるのかと思ってた。
知らずにタブーに触れてしまった感じ。
なんだかいたたまれなくて
どうしたらいいか分からなくて。
でも別に俺ら､大丈夫っすよ。
居心地が悪そうにAがそう言っても
固まった空気はそのままだった。
「何人兄弟なーんすか？」
こういう時に
空気に聡い佐久間が突破口を開くように
明るくて優しい声で聞く。
ようやく空気が動き出した。
「下に3人。
弟と小学生の双子の弟と妹だよ」
「へー、凄いでがんすね。」
「すぐ下の弟はラウールの2つ下でね
双子ちゃんの妹は、舘様が好きで、
弟はみんなのこと好き〜って言ってたかな」
「嬉しい。ありがとうって言っておいて」
「うん！ロイヤルな舘様から
そう言われたって言っておくね！」
そのまま和やかなまま会話が弾んだ。
さっきのことは無かったことのように。
氷が透明な水に溶けていくように。
そのうち氷は水の中に溶けて
見えなくなっていった。
こっちからこれ以上触れていいのか
Aからさらけ出すまで待っていた方がいいのか
分からないまま時は過ぎて
メンバーの家に着くと
一人、また一人と人数が減っていった。
そしてAも
「お疲れ様でした」と車から降りていった。
あの言葉掛けで良かったのか
もっと良い言葉があったのではないか
そう思うとAの横顔が浮かんできて
なんだか石を飲み込んだような
重い気持ちになった。
………………………………………………………………
城崎side
白いバンを降りると
冷たい夜風が身を纏う。
心の奥もすっと冷えていた。
誰も悪くない。
それは分かってる。
だけど嫌だったんだ。
言ったら可哀想な目で見られる。
腫れ物に触るような扱いをされる。
そんなの嫌だったから。
... 誤魔化せばよかったかな。
普通に接してほしい。
あの時も思っていた。
お父さんが死んだあの日。
もう少しで10年になるあの日。
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れお(プロフ) - mizuiro様、ご指摘ありがとうございます。 (2022年10月4日 21時) (
レス) id: bff8188722 (このIDを非表示/違反報告)
mizuiro(プロフ) - No.6のとこ、舘様の名前がないです...! (>_<) (2022年10月4日 19時) (レス) id: c168ba2284 (このIDを非表示/違反報告)
れお(プロフ) - さとさん！ありがたいコメントありがとうございます( ¨̮ )❁今後も頑張ります！ (2021年11月10日 23時) (レス) id: bff8188722 (このIDを非表示/違反報告)
さと - この話をよんで感動しました。続き待ってます。 (2021年11月10日 21時) (レス) @page6 id: 8ca27b57ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Leo | 作成日時：2021年11月6日 19時
