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改めて腕時計を見ればそろそろ収録の始まる時間で。
「じゃあ、俺はこれで」
「あ、はい!次会った時お礼させて下さいね!」
「それは別に良いですよ、じゃ…」
そう言い合って、それぞれお互いの仕事場へと向かったわたしたち。
その後は、順調にも順調だった。
まず、中村さんに見られたということを警戒した彼女たちはあの時以降わたしに突っかかる事も無くなり、至って平穏な収録環境となったわけで。
わたしはわたしで、中村さんの言葉によってもっと堂々と胸を張って仕事に向き合う事が出来るようになった。
心持ちというのは大切なもので、自分がやれる!そう思えばモチベーションも雰囲気も良くなり、今までの自分以上のパフォーマンスが出せたし、音響監督さんや共演していた先輩方にも好評だった。
「…って事があって、この間中村さんのおかげで今の絶好調なわたしが居るんですよ」
「へぇ、あの中村が」
「月白さん最近めちゃくちゃ良い感じだけどなんかあった?」という質問にそう答えたのだけれど、ほぉ、ふぅん、と顎に手を当てて物珍しげに相槌を打つのはメインヒーロー役の杉田智和さん。
今回のお相手役という事もあって、色々な事でお世話になっている。
「あの人見知りの中村がねぇ…」
「そんなに人見知りさんなんですか?わたしよりも?」
「月白さんより絶対拗らせてる……というかちょっと変わった拗らせ方みたいな?」
「へぇ……ちょっと気になりますねそれ」
「その調子ならわりとすぐに分かると思うぞ」
何やら含みを持った言い方にクエスチョンマークを浮かべつつも、わたしからも杉田さんに聞きたいことがあったのを思い出した。
「その件で中村さんにお礼がしたいんですけど、どんな物あげたらこう、喜んで貰えるというか、当たり障りないですかね?」
「えー?中村だろ?…ゲーム関連、と言いたい所だけどそういうのは自分で集めてるだろうし、金かかってそうな物とか渡すとアイツ警戒心の強い猫みたいなもんだから、あんまり受けが良くないしなぁ…」
「そうですよねぇ……程々にお礼になりつつ、っていうのがなかなか難しくて……」
「あとは肉が好きだけど、初っ端から食事っていうのもアイツは無理だろうし、無難に行くなら適当なお菓子で良いんじゃないか?」
「急に雑になりましたね」
「多分そのくらいの方が喜ぶ、と、俺は思う」
「杉田中村コンビの相方の言葉、信じますからね!」
「ええ?俺の責任重くない?」
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リクス(プロフ) - キュンキュンします、ありがとうございます (2023年1月28日 22時) (レス) @page19 id: 19eff5b33e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豚汁 | 作成日時:2023年1月22日 7時