：5 ページ47
・
「何時頃に家出る？」
そう簡潔に書かれたメールに、脳内でこの後の予定を軽く立てていく。
食べたら洗濯物干して、掃除機かけて、軽く水周りの掃除して、化粧して、あと一番大事な中村さん関連だと分かるグッズを隠して、まぁ大体昼過ぎには終わるだろうか。
出発を13時予定に決めてその旨を伝えれば、「じゃあ13時にアパート前で待ってる」と返ってきた。
諸々の家事を終え、身支度を始める頃にはもう12時を回っていた。
なかでも一番苦戦したのは中村さん関連グッズの隠蔽で、相変わらず本人にファンである事を悟られないようにしている身なので隠すのは必須なのだ。
やっぱりバレたら気まずいだろうし、今の関係に下心があるかもと思われたくないし……そして、なんとなく知られるのは恥ずかしい。
今日は、もはやトレードマークと化しているフード付きのパーカーと黒のキャップはお休みだ。
休みの日くらいはタンスに眠りっぱなしの服を着てあげたいし、少しくらいお洒落はしていたい。
代わりのキャスケットと身バレ対策用のマスクを装着し、ボスをひと撫でしてからアパートの部屋を出てしっかり施錠をする。
階段を降りた先にはいつも通り黒を基調にしたスタイルの彼が立っていて、スカジャンに帽子にマスクは、本人の雰囲気も相まって若干厳つさを醸し出しているけれど、妙にしっくり来てしまう。
視線か足音に気付いたのか、こちらに顔を向けるとヒラリと手を軽く振られたので小さくお辞儀しながら早足で駆け寄った。
｢おはようございます中村さん｣
｢ん、おはよ｣
そのまま自然と歩みを始めるわたしたち。
彼の隣をこうやって歩くのもすっかり慣れ親しんだものだ。
｢行き先は駅前にあったヤマダ？｣
｢そうですね、なるべく近い所が良いのでそこの予定です。中村さんは何が欲しかったんですか？｣
｢イヤホン。最近ノイズが入るようになっちゃって買い替えたいんだよね｣
｢あー…それはめっちゃ気になるやつですね……｣
昨日のゲームについて話したり、最近聴いてる音楽のことを話したり、普段と変わらない会話を繰り広げながら住宅の多い道から店の多い通りへ出る。
｢そういえば今日はいつもの服装じゃないのな｣
｢流石に年中あの格好じゃないですよ？？休日ですからたまにはって感じです｣
｢パーカー以外を着てるお前を初めて見た気がするんだけど俺｣
｢あー……｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 307人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リクス(プロフ) - キュンキュンします、ありがとうございます (2023年1月28日 22時) (
レス) @page19 id: 19eff5b33e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：豚汁 | 作成日時：2023年1月22日 7時
