これを装備するにはレベルが足りない！ (ページ44)

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｢猫いいなぁ……｣

｢まだ言いますかそれ｣

猫みたいな人なら目の前にいるんだけどなぁ。気まぐれでマイペースで、沸点が謎なところとか特に。
言ったら怒られそうだから言わないけど。

我が家のボスの写真を見て、そう呟く中村さんに苦笑しながらハンバーガーに齧り付く。
ラジオ収録は大体午後の事が多く、お互い予定が無ければ一緒に夕飯を食べることもちょくちょくあって、今日は某M字のバーガーショップに寄り道していた。
ひとり暮らしの自炊って中途半端にやると逆に高くついてしまいがちなのが、最近の密かな悩みだ。

｢あ｣

｢どうした？｣

｢いや……すっかり忘れてた事を突然思い出してしまって……｣

自炊というワードから思い出したわりと重要な事。
実は祖父と本来同居する予定だったのはうちの実家ではなくて母の姉の実家だったのだけれど、娘さんが出産で戻って来てるらしくて、キャパオーバーで頓挫。
それで色々急に同居が決まったのと、それによって猫を都内ひとり暮らしのわたしに移動させなきゃいけなくなり、動物の世話代は掛かるからと、お詫びに嫁ぎ先が農家の叔母から大量の野菜や米が送られてきたのだ。

｢中村さんって自炊します？｣

｢いや、全くしないね｣

｢そうですか……｣

なんかあるの？と、聞いてくる中村さんにその事情を話した。
なんせダンボール一箱ギチギチに入っている。ありがたいけど、これをどう1人で処理しろっていうんだ。

｢野菜ねぇ……鍋とかしないの？｣

｢鍋かぁ…｣

確かに鍋なら何日かに分けて食べれるし、アリかもしれない。
鍋を買うところからというのが若干めんどくささはあるけど、確かに今の季節的にも良いかも。
炬燵に猫に鍋、ついでに蜜柑もあれば完璧な絵面じゃないか。

そこまで思い浮かべたところで、猫といえばその手があったかとある事を閃いた。

｢中村さん、良かったらうちで鍋パしませんか｣

｢……お前ん家で？｣

食べる人数増やせば消化も早いよね、という事で提案してみたのだけれど、少し考えるようにしながら聞き返してくる中村さんに、流石に家に招かれるのは嫌だったのだろうか。それとも野菜は好きじゃないのだろうかと少し不安に駆られる。

｢ついでに中村さんご所望のボスと炬燵でぬくぬくしながら戯れられますけど…｣

｢行くわ｣

猫を出した瞬間見事に食い付いた中村さんはわたしよりもウキウキで、いつにするのか、何か必要な物はあるかなど計画を練り始めた。