これを装備するにはレベルが足りない！ (ページ4)

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何がきっかけでそれが憧れになったのかは、今の自分にも分からないけれど、若かりし頃の自分にとってはそれが強く印象づけられ、同時に憧れとなった。

そして『Angelic Voice』というこの作品ではそんな彼女らの後を追うように、わたしがメインヒロイン役と主題歌を歌わせて頂く事となったのだ。

マクロスシリーズからの影響で歌うヒロイン、というものが流行っていた時代なのもあったのだろう。
わたしが演じるメインヒロインも、ランカやシェリルのような歌を得意とし、アーティストを職業としていたキャラクターで、演技力と歌唱力、有難くもその両方を評価されてオーディションで、実力でしっかりと勝ち取った訳なのだが、それを良く思わない人は当然出てくるわけで。

同じく出演していた先輩方に見事、妬まれていたというわけである。

そしてそこに運悪く通りかかってしまった中村さん。

わたしたちが居た廊下へとうっかり気付かぬままに曲がり角を曲がってきてしまった彼は、彼女らもわたしも気付いてしまったせいで、この状況を無視出来る事が出来なかった。

けれど、中村さんという存在がこの状況に介入してくれたおかげで、先輩方もこれ以上は不味いと思ったのか蜘蛛の子のように散ってくれたのだけれども。

そして少し寒い廊下に残されたのは、壁際に追い詰められていたわたしと、どうしたものかと困惑している様子の彼。

｢ごめんなさい、変なところを見せてしまいました｣

まぁ謎に喧嘩売ってきた彼女たちが悪いのだけれども、そこはこんな最悪な場面を見せてしまった連帯責任という事と、申し訳なさで深く深く謝罪させて頂いた。

｢…はぁ｣

そう、深くため息をついた彼に思わず肩がビクリと跳ねる。
やはり気を悪くさせてしまっただろうかと彼の顔を恐る恐る見れば、慌てた様子で「ごめん、月白さんに対してじゃない」と、訂正されたその言葉に、初めて共演した時の印象があまりにも寡黙でクールな感じだったのでその反応は少し意外に感じ、そして、わたしの緊張を解すには十分だった。

少しの沈黙のあと、気が抜けてしまったわたしは、彼に構うことも無く壁に背を預けてそのままズルズルとしゃがみ込んで、膝に顔を埋める。

安心というか、緊張の糸がプツリと切れたというか。

放心状態でぼんやりとしていると、足音が近付いてきた。

そしてその音はわたしのすぐ隣で止まる。