これを装備するにはレベルが足りない！ (ページ3)

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序章 - ゲーオタたちの再会 - ページ3

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わたし、月白Aが中村悠一という人物をはっきりと認知したのは代アニを卒業してすぐの事だった。

在籍時にこんな卒業生が居て、今はこのアニメに出演してるんだ、なんて講師の紹介はあったけれども、当時のわたしは憧れの女性声優さん達にしか興味もくれず話半分に聞き流していたのを今でも覚えている。

今になってみれば、なんてもったいない事をしていたんだと当時の自分を殴りたくなるものだが、ある意味この再会に関しては彼を知らない事が功を奏したのではないだろうか。

それほどまでに、彼との最初の絡みはターニングポイントだったと思う。

彼と本当の意味でしっかりと向き合って会話したのは、わたしが21歳、彼が28歳の時だった。

ファーストコンタクト自体はその一年ほど前に共演した『影月』という作品の収録時に終えていたのだが、うん、この時はほぼ全くと言って良いほど会話も絡みもなかったので割愛させていただく。
ひとつ言えるのは、初対面の中村さんはやっぱり人見知りだったということだ。

そんなわけで、別の作品で来ていた彼と偶然再会したのだけれど、その再会した状況もこれまた最悪で、わたしが他の先輩女性声優に責め立てられている場面だったのだ。

｢なんでアンタがまたヒロイン役に……｣

｢デビュー以降パッとしなかった落ちこぼれのくせに！｣

等々、中々に強烈な言葉を浴びせられたのを覚えている。

ある意味それは今もトラウマとしてこっそり残っていたりするのだが、こちらも今の話には関係ないので割愛しておこう。

なぜ彼女たちがそんなに怒っていたのかというと、それはわたしの経歴にあった。

中村さんとも出会う前、代アニを卒業してすぐ、偶然オーディションで受かった作品のキャラクターが準ヒロインとはいえ、世間でとても人気を得たのだ。
準ヒロインという枠を新人声優であるわたしが勝ち取ったのも話題として拍車をかけ、声優としても大きな第一歩となる……わけでもないのがこの業界。

そこから暫くの間、新人らしく細々な役を演じさせて頂く日々が続いていたわけだけれども、そんな人生を左右したと言っても過言でないのがこの、先輩方に虐められながらもやり抜いた『Angelic Voice』という作品だった。

わたしには憧れの声優が2人居る。

林原めぐみさんと水樹奈々さんだ。
両者には共通点がある。

どちらも自身が演じていた作品の主題歌を担当していたという事だ。