第2章 -ゲーオタ、そして意気投合- ページ20
(Side.N)
「次全体来るよ」
「はぁい、全体軽減入れました」
「これでも痛えな!?」
「何これゴリッと減るんだけど?!戻します戻します!」
「…あと少し、これはいけるな」
「……お?やったー!!」
「ナイスヒール回し」「慣れてないのでコール助かりました」なんて互いに褒めたり感謝したり、大きな戦闘後特有の会話を繰り広げる。
「今何時だ…?」
ふわぁ、と大きく欠伸をしながら言う月白さんの声をヘッドセット越しに聞きながら、釣られるように欠伸をしながら自分もテーブルの上に置かれた時計を見る。
「11時か……」
「わぁ、太陽が真上だぁ」
「俺ら何時からやってたっけ」
「昨日は…昼の10時集合でしたね」
「やばいな」
「やべーですねぇ……朝日が目に沁みる…」
欠伸を零しながらそう返す彼女に、「流石にそろそろ終わるか」と声をかければ「そうですねぇ…」と眠たげな声が返ってきた。
流石に24時間丸々ゲームさせるのはどうかと思いつつも、彼女とのやり取りが面白くてつい時間を忘れて遊んでしまった。
というか、年の離れた異性とのオタク会話によく着いてこれたなぁと感心まである。
ゲームの好みや、傾向、思考回路が似ていたのも大きい。
こんなに女性と短期間で打ち解け、尚且つオタク過ぎる会話であんなに盛り上がったのは初めての経験だ。
(何話したらいいか分からなくて友達が全然居ないって言ってたけど、全然面白いし話せてたのにな)
ふと画面へ視線を戻すと、目の前に立っていた筈の彼女のアバターが何やら壁に向かって歩いている。
何かあったのかとそれを目で追ってみるが、そのまま壁にぶつかって、それでも歩みを止める様子がない。
「月白さん?」
「……」
「おーい月白さん」
「……ぁ、すみません、一瞬意識が飛んでました…」
「寝よう」
「ですね…」
どうやらスティックを傾けたまま寝落ちてたらしい。
そんな彼女と「おつかれ、また遊ぼう」「おつかれさまでした。ぜひ、また遊んでください」と、別れのやり取りを終え、VCを切断しようと切断ボタンに指を添えたところで「中村さん」と呼び止められた。
「おやすみなさい」
「…ああ、おやすみ」
VCソフトの通話切断音が鳴る。
演技する時の声と地声は使い分けるタイプなのだとゲームの合間に話していた通り、地声の時のありのままの音で紡がれたその言葉は少しむず痒くて、でも、なんか良いな、なんて咄嗟に思ってしまった。
(いや、何考えてるんだ俺は…)
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リクス(プロフ) - キュンキュンします、ありがとうございます (2023年1月28日 22時) (レス) @page19 id: 19eff5b33e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豚汁 | 作成日時:2023年1月22日 7時