これを装備するにはレベルが足りない！ (ページ18)

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びゅう、と吹く冷たい風が火照った頬にちょうど良い。

地元違って東京は明るいなぁ、なんて思いながら、ついこの間収録した新曲を小さく口ずさみながら夜道を歩く。

もう年末かぁ。
せめて年明けまでには中村さんにちゃんと謝らないと。

マクロスやガンダム、CLANNADにおお振り、あとしゅごキャラにその他にもたくさん。
ヒット作に話題作、人気シリーズへの出演が多かった彼はきっと来年はもっと忙しいだろう。

彼とほんの少し交流をしただけの新人のわたしなどでは、到底声の届かない場所へ。

ラッキーなことに打ち上げに使った店は自宅のある最寄り駅のすぐ隣の駅だったので、繁華街を抜けて自宅へいちばん近い道を歩く。
ここからほぼまっすぐ線路沿いを道なりに行って、途中にある公園を通り過ぎてすぐに最寄り駅だ。

少し飲み過ぎてしまった気もしたので、このまま歩いて酔いを少し覚まそう。

そう、静かで誰も居ない道を自由気ままに、のんびりと歩き出した時、背後からここ数週間ですっかり聞き慣れてしまった声がして。

｢月白さん、｣

｢え……｣

思わず、弾かれたように反射的に振り向けば、そこには少し息を切らした噂の彼が、中村さんが居た。

｢中村さん？……え？なんでここに？｣

｢抜けてきた。月白さんに用があったから｣

まるで意中の女性を口説くかのようなそのセリフが、彼の口からその声帯で優しく紡ぎ出されるのは心臓に悪すぎる。本当に。
ここが今街灯の少ない夜道で、なおかつアルコールを摂取していたおかげで顔に熱が篭っている事には気付かれないだろう。

｢えっと……その、用とは…｣

｢分かってるでしょ。…ここじゃアレだし、そこの公園で話そう｣

どうやら拒否権は存在していないらしい。