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「で?月白ちゃんはどういう訳で?」

「いや……あの………」



収録が終わってすぐ「ちょっといい?」と杉田さんに呼び止められると、収録現場の片隅に連れられ、小声で耳打ちされた。
まだ周りには他のキャストの方も居るので配慮なのだろうけれど、少々視線が痛い。


「さっきのアレ、どうした?人見知りでも発動した?」

「そういう訳じゃないんですけど……」

「え、アイツ何か変な事でも言った?やらかした?」

「いやいや!それこそ全くないですよ?!」


個人的な問題すぎて言うのもはばかられるのだけれど、なんだか勝手に中村さんの名誉に傷が付きそうな流れになりつつあるので、泣く泣く白状することとなった。





「……つまり、中村の声が好きになってしまったせいでまともに声が聞けないと」

「はい…」


あまりにも恥ずかし過ぎる暴露に両手で顔を覆いながらそう答えれば、「恋する乙女か」と突っ込まれる。


「違うんですよ、そういう訳じゃないんですよ。確かにこの二週間で中村さんの出たアニメ全部観ましたけれど」

「行動力すげーなおい」

「ゲームはまだ手を付けられてないんですけどね……って、そうじゃなくて」


なんというか、こう、なんだろう。
この二週間中村ボイス漬けで暮らしていた弊害というか、生で彼の声を聞いてしまったら咄嗟に逃げ腰になってしまったのだ。
演じている時の声や癖、それらの理由で声優さんとしてその人を好きになる事はそりゃ勿論今までもあったのだけれど、その人の地の声をラジオを聞いて胸がときめく、という所までは至っていなかった。

なのに、中村さんの声だけはなぜか普通に喋っている時の声にさえときめいてしまって、自分でも困っているのだ。

杉田さんが『恋する乙女か』と言っていたけれど、『彼の声に恋する乙女』と付けるならば当てはまってしまいそうな勢いではある。そこは認めよう。


「そういやゲーム一緒にやる約束してたらしいじゃん?」

「それは、あの、直前になって緊張してしまって……」

「逃げてると」

「はい……」


そう、声とは別の理由で遊ぶのを断ってしまっているのだ。
勢いで仲良く?なったものの、いざ一緒に遊ぼう!ってなると直前になって尻込みしてしまうわたしの悪い癖。
いい加減直すべきなのだとは分かっているのだけど。


「アイツのことが嫌になったとかじゃない?」

「全然そんなことは無いですよ!全部わたしが悪いだけなんです……」

:3→←第1章 - 心の準備が出来ていない -



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設定タグ:中村悠一 , 男性声優 , 声優   
作品ジャンル:恋愛
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リクス(プロフ) - キュンキュンします、ありがとうございます (2023年1月28日 22時) (レス) @page19 id: 19eff5b33e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:豚汁 | 作成日時:2023年1月22日 7時

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