これを装備するにはレベルが足りない！ (ページ12)

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わたしの食べる順番にも気付いていたらしい彼はそう聞いてきた。
その通り、何を隠そうわたしも猫舌である。

｢も、ってことは中村さんも？｣

｢そうなんだよね。ハンバーグ鉄板だから、まだ熱くて無理そうで｣

｢前回ハンバーグ食べたわたしがまさにそれでした。少し冷めるのを待ってる間にスープとサラダが空っぽに…｣

｢分かる、それめちゃくちゃ分かる。中華料理とか特にない？｣

｢あー！ありますあります！そして待ってる間に食べる餃子すら熱くて……｣

｢熱すぎて肉汁で火傷……｣

｢あぁ…分かり過ぎます……｣

そんな謎の猫舌トークで盛り上がるわたしたち。

「そろそろいけるかな」と、ナイフとフォークを構えた中村さん。
あまり見るのはお行儀が良くないとは思いつつも、味の感想が気になってしまい、ついつい見てしまう。

猫舌あるあるのひとつ、熱いものは小さく切って食べがち、の通りに一口サイズに切り分けられたハンバーグを口へと運ぶ。

｢うま…｣

心の底から、といった感じで感想を零す姿に安堵する。
これで口に合わないとかいうオチは流石にメンタルが死ぬので。
彼の反応に安心したところで、わたしもオムライスをひと口放り込めば、じゅわりと広がるバターと玉子に、デミグラスソースの味。
まろやかで、でもくどくなくて、優しさと少しのこってりさはなんとも言えない絶妙なバランス。
極めつけにこのトロトロな玉子の食感は、半熟トロトロ好きとしては文句なしの一品だ。

｢美味しい？｣

すぐにもう一口含んでしまったため、その問いかけには頷くことで返すしかなかったけれど、それで伝わってくれたらしい。
「次来た時は俺もオムライスにしようかな」と呟いた中村さんのハンバーグの方は既に口に入れても全く平気な熱さになったようで、そこからどんどんペースを上げて食べていった。

｢すみませんご馳走になってしまって｣

｢全然。後輩に奢るのは先輩の役目だし、良い店教えて貰ったからな｣

｢ありがとうございます…｣

店を出てお互い電車通いという事もあったので、駅前まで一緒に歩くわたしたち。
もちろん車道側を歩くのは彼のほう。
なんなんだこの人、スマート過ぎないか？？？

現実にちゃんと居るんだな、女性を庇って歩く人...。

｢帰りは大丈夫か？｣

｢あ、はい。あと電車乗ってすぐなので｣

｢なら良かった｣

「都会とはいえ流石に暗くなってきたしな」と、言いながら街を眺める中村さん。