雪男短編

＊ ページ6

iw side

またしても阿部はあっさりと倒れた。

「わーー…あ？」

先ほどと違うのは、倒れた阿部の上に俺も倒れたこと。

「ひ、照？おも、重いんだけど…」

阿部の言葉を無視して目の前にある首筋の匂いを嗅ぐ。レッスン終わりだし阿部は汗っかきだから流石に汗臭いが、嫌な感じはしない。

匂いを嗅がれてることに気づいた阿部は

「え、ちょっと！嗅がないで！今絶対臭いじゃん！嫌なんだけど！」

と騒ぐが俺を押し退けるほどの力はない。

「いや、臭くない。汗の臭いはするけど、意外といい感じ」

「は？照がそんな変態みたいなこと言うの聞きたくない」

なんて怪訝な顔をしていた阿部だが、首がくすぐったかったのか、

「くふふ…ふふっ」

と笑い出した。まただ。かわいい。

笑わせたのが俺だと思うと、また、満足する。

自分の体を少し起こして顔を阿部の首筋から顔の正面に持ってくる。

あと5センチほどでおでこが触れそうな距離に阿部は笑うのをやめて目を泳がせた。

「照…？顔近くない？」

「そう？25歳最期の阿部倒した自分に浸ってるとこなんだけど」

「いやっ、でも、なんか、あ、」

「なに？」

「重いし、近いし、なんか、その」

「なんだよ、言えよ」



「…ちょっと恥ずかしい」

＊→←ラスト倒し【iwab】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す