青く、蒼く。 (ページ46)

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21-初試合ページ46

卓也said

「…今日、勝とう」

「卓…どした？」

鍵谷に心配そうな顔で声をかけられた。
あ…心の声が出ていた。

「鍵谷…俺、今日勝ちたい」

「俺もだよ…皆思ってる。毎回勝ちたいって…。でも…今日の意気込みは、みんな違うんじゃないかな？」

「…ここまで支えてもらったけん。野球で恩返ししたいっちゃ」

「うん…Aちゃん、野球の試合見るの初めてって言ってたからね」

「…恥ずかしくない勝ちにしたい」

「頑張ろう」

こぶしをぶつけてグラウンドに出る。
ストレッチをしている遥輝の隣に座る。

「卓さん…Aちゃん、ベンチには入れないって」

「さすがにわかっとーよ」

「ちゃんと球団職員として、トレーナーとしていれば…ベンチに入れるって」

「…遥輝」

「わかってます。AちゃんにはAちゃんの世界があることを。でも…」

遥輝は顔を上げて、空を見る。空は…泣きたくなるくらい青かった。

「傍にいてほしい」

誰がどう見てもわかる。遥輝は…Aの事が好き。
でも…こればかりは譲れない。俺やって、Aの事が好いとう。

「そうたいね…傍にいてほしーっちゃ」

「…わかってんだけどなー、頭では」

皆わかってる。頭ではわかってる。
でも…もしかしたら、トレーナーとして残ってくれるかもしれない。そんな淡い希望を抱いている。

「遥輝、今日勝とう」

「もちろんっす。卓さんこそ、ファール出し過ぎてAの飛行機送らせないでくださいね」

そう、今日Aは試合を見てくれるけど…終わったらすぐに東京に戻らなくちゃいけなくて…時間がない。
ファール出して…遅らせることはできない。

「勝ったる」

野球をしている俺を…カッコいいと思ってもらえるように。

それから少しして試合が始まる。
声出しは…大将。

翔「オープン戦…ここで勢い付けて、今年を駆け抜けてくぞ。そんで…あそこでそわそわして泣きそうなうちのトレーナー(仮)を…勝利の女神にしましょう、さぁ、行こう！」

「「「おぉ！」」」

そうだ、俺たちは…Aを勝利の女神にする。

全員でAに向かって拳をだす。すると、こっちに気がついたAは立ち上がり…拳をだしてきた。
さっきまで落ち着きがなかった顔ではなく…まっすぐ俺たちを見ていた。

ここからがスタート。

いつか…奇跡が起きて…Aがこっちにきても恥ずかしくないように。

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