13-止まらない ページ30
卓也side
「A、キャッチボールしよう」
その一言を投げると、Aは心底嫌そうな顔をした。
「他当たってください」
「皆いないけん、Aに頼んどる」
全体練習が始まる前…久しぶりに2人になれたから誘ってみたのに。
「人生初めてのキャッチボール相手がプロ野球選手とか嫌です」
「なんで?プロ野球選手が野球教えてると。今更や」
「…下手でも笑わないですか?」
「笑わない」
「約束ですよ」
「ん、約束」
渋々といった感じで、承諾してくれた。
「グローブこれ。Aん手、細か…」
「こまか?」
「あぁ、小さいってこと」
「ちょっとムカッときましたけど、博多弁なので許します」
「なんやそれ」
「私、卓也さんの博多弁好きです」
その言葉に、手が止まる。
自分に言われたわけわないんに…ドキッとした。
「卓也さん、これであってますか?」
「え、あぁ…あってる。そこに立ってて。んで、俺がいるところに投げて」
「…絶対にヘタですよ」
「よかよ。Aの初めてのキャッチボール相手やし…それで十分」
少し顔を赤くしたA。あ…なんか嬉しい。
Aから少し離れる。
「投げてー!」
「いきまーす」
少し声を張るAがかわいい。
そして…振りかぶって投げてきた。まぁまぁな勢いで…。
俺が思っとった初球ではない。
「待って、初めて?」
「はい、初めてです」
「…うますぎる」
「本当ですか?!よかったー!」
素で喜ぶA。
本当はもっと可愛らし球を待っていたけど…まぁ、これはこれで良しとする。
その後も、それなりのキャッチボールをする。
やはり、運動神経がいいようで、それなりの距離でそれなりの球を投げてくる。
もう少し遠くに行こうと思ったら…
「待ってっ!」
そう言って、Aがこっちに走ってくる。
「どげんしたと?」
「あっ…ごめんなさい」
しゅんとなって、少し涙目のA。
不謹慎だけど…可愛いも思った。
「あの、」
「ん?ゆっくりでよか」
同じ目線になって頭を撫でる。
「遠くに…行かないでください」
「…え?」
「もう少し…近くでキャッチボールしたいです。寂しい…です。声届かなくなるの…怖いです」
あぁ、だめだ。
いつもなら、何言ってんだこいつ。ってなるのに…Aっていうだけで…可愛いが勝つ。
「ごめん…もう少し近くで…。なんて思ったけど、今日は終わり。皆が来た」
「あ…本当だ」
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作者名:ゆき | 作成日時:2018年11月16日 12時