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「あと、5回〜」

「まじでっ…無理」

「大丈夫、喋ってる間に終わりますよ。ほら、あと一回…はい、お疲れ様です」


卓也さんのトレーニングのお手伝いをさせてもらっている。


「卓也さん、少し体柔らかくした方がいいですよ」

「わかってるんちゃけど…無理やけん」

「無理じゃないですって」

「Aは柔らかそうやな」

「そこは負ける気しません」


床に座っている卓也さんの隣に座ってべちゃーと体を倒す。


「うわ…」

「ちょっと、ひかないでくださいよ」

「想像以上に柔らかかったから」

「柔らかくないと怪我してしまいますよ」

「いつもどんなトレーニングしてるん?」

「野球選手とは全く違いますよ」


だから、こうやって実践交えて勉強させてもらっている。


「よし、卓也さん今日は終了です。監督が終わったら来てほしいって言っていたので…監督の所に行ってください」

「はーい。なんか、トレーナーになってるやん」

「そうですか?そう言ってもらえて嬉しいです」

「…無理はだめやけん…わかってる?」

「わかってますよ」


卓也さんと一緒にいて、よくわかった事…

卓也さんは、私を心配しすぎて甘やかす癖があるみたい。
今回みたいに良く頭を撫でる。


甘やかすというか…子ども扱いか。


「監督呼んでますよ」

「今どこにおるんかな」

「さぁ、どこでしょう…さっきは、グラウンドにいましたよ」

「なら、行ってみるっちゃ。Aは?」

「私はここ片づけてからいきますね」

「なら、俺も…」

「あぁ、選手の仕事じゃないです。これは私の仕事です。卓也さんは監督の所に行く」

「…無理は」

「しません…片づけだけで無理できないですよ」

「…それでも無理するのがAやから」

「卓也さん心配性」

「Aにだけ」


まっすぐな目で見られて…私は片づけの手を止めてしまう。


「…これ以上は言わない…これだけじゃなかと。他にも…無理する前に俺に言う事。ええ?」

「はい」

「ん、いい子。ほな…ありがとう」


あぁ、これは…わかった。

この人は…無意識に女の子を惚れさせてしまう…。


「ずるい人だ」

「あれ、Aちゃん」

「あ、近ちゃん」

「何か独り言?」

「そう…日ハムは…ずるい男の人ばかりだなって」

「…ん?それはディスられてる?」

「いや…ある意味褒めてる」

「わかった、ディスられてるんだね」



ずるすぎです。女の子は…頭を撫でられるだけで、勘違いしてしまうんですから。


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作者名:ゆき | 作成日時:2018年11月16日 12時

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